家庭用のゲーム機や携帯型ゲーム機の販売が限界を迎えていることは、任天堂が一昨年度まで3期連続の赤字に陥ったことからも明らかだ。家族がテレビの前でゲーム機を囲んで楽しむ時代は終わりつつある。ゲームは、家ではオンラインのパソコン、自宅の外ではスマホで楽しむものに変わったのだ。
数字でみても、WiiUの販売台数は、世界全体では24%増えたが、国内では40%減っている。3DSは、世界全体で29%減だ。ハードウェア全体でみても、販売金額は前年度比7.2%減っている。
そうしたハードウェア不振の中、キャラクターたちが大きな貢献をした。
例えば、WiiU用の『マリオカート8』は511万本の大ヒットとなり、3DS用の『ポケットモンスター・オメガルビー・アルファサファイア』は994万本も売れた。任天堂が抱えるキャラクターたちが、世界中で圧倒的な競争力を発揮したのだ。その結果、ソフトウェアの販売金額は前年度比で0.6%増えているのだ。
キャラクターがいかに強いのかということは、任天堂がアメリカのユニバーサルスタジオと提携したことからも明らかだろう。これによって、アメリカのユニバーサルスタジオにマリオのアトラクションが作られると、もっぱらの噂になっているが、私は日本のUSJにもマリオが早々に登場するのではないかと考えている。USJには、すでに二つのカートのアトラクションが存在し、カートのボディーを塗り替えて、帽子と髭を貸し出すだけで、マリオカートに変身させることができるからだ。
キャラクターの収益力がいかに強いのかは、そのUSJの経営からみても明らかだ。USJは、2001年の開業以来、入場者数が減り続け、'04年度には経営破たんに近い状況に追い込まれた。それが、昨年度の入場者数は前年度比220万人増の1270万人と、開業以来最高を記録したのだ。
V字回復の一番大きな原因は、もちろんハリーポッターだが、それ以前にUSJは、ユニバーサルスタジオの映画とは縁もゆかりもないキャラクターを大量投入することで、入場者数を増やしていったのだ。
ハローキティ、モンスターハンター、進撃の巨人などの導入には反対意見もあったという。しかし、映画専門のテーマパークというプライドを捨てて、お客が喜ぶキャラクターであれば、何でも採り入れたのだ。
任天堂は、すでにDeNAと提携して、スマホへのゲーム提供を進めようとしている。スマホでマリオやドンキーコングができるようになる。任天堂の業績が本格回復するのは、それ以降になるだろう。
日米首脳会談に合わせてシリコンバレーを視察した安倍総理は、その文化を日本に取り込むことの重要性を強調した。しかし、日本には圧倒的な国際競争力を保持するキャラクターという文化がすでにあるのだ。どうしてそれを活用しようとしないのだろうか。