いまのいままで、ずっとTVに釘づけで、私の呼びかけに返事すらしなかったのに…。携帯が鳴った瞬間にこれだもん。本当に嫌になる。子どもっぽいなと自分で思いながらも、あえて、返事はせず、無言でメールの返信を打ち始めた。無言の気まずい空気が流れる中、彼氏の深いため息が響いた。
「男に媚売るだけの商売でいつまでも食っていけると思うんじゃねえぞ」
「思い出すだけで腹が立つ」
「何が?」
最後に放たれた一言に苛立ちを隠せなかった私は、あれから一言も言葉を発することなく家を出て、モヤモヤを残したまま出勤してきた。パートナーであるはずの彼氏にこの仕事を認めてもらえなかったからなのか、自分をバカにされたからなのかはわからないけど、とにかくショックだったのは事実。
「…やっぱり、普通の人からすれば、キャバ嬢って仕事と呼べないのかな?」
「どうしたの、急に? アユらしくないね」
お客さんの前でこんな弱音を吐くなんて、本当に私らしくないと思う。でも、何度も言うけど、それくらいショックだったんだよ。彼氏から言われたあの一言が。
「キャバ嬢は立派な仕事だと思うし、胸を張っていいんじゃない?」
「みんなそういうけど、実際に自分の彼女がキャバ嬢だったら嫌でしょ?」
「いや、俺は全然かまわないよ。むしろ、ウェルカムだよ(笑)」
「嘘だ〜! 絶対にいい気分しないじゃん!」
意地になる私を見て、目の前にいるお客さんはこう言ってくれたの。
「嘘じゃないって。俺の今までの彼女って、みんな水商売の子だよ?」
「えっ、何ソレ。おかしくない?」
「だってさ、俺だったら絶対に無理だもん。この仕事。体力的にもだけど、気持ち的に疲れちゃうでしょ? でも、それを一切顔に出さず、毎日笑顔でいる女の子を見てるとすげえなって感心するんだよ」
だから堂々と胸を張りなさいと、私の頭をポンポン叩きながら、彼は優しく言ってくれた。
ああ、自分の仕事に誇りを持ちたいなら、こうして理解してくれる人をパートナーに選ばなきゃダメなんだなって、ひとりで納得しちゃった。
取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。その後、これまでの経験を活かすため、フリーランスへ転身。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
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