ボブ・ゲレン監督、そして、ビリー・ビーンGMは「(松井は)段々良くなっていく。他に調子の良い選手がいたからベンチスタートになっただけのこと」と前向きに語っていたが、このまま行けば、松井が“ドライなシーズン途中の放出”の標的とされるのは必至だ。
こんな見方もされている−−。
「一般論として、メジャーでは優勝戦線から脱落したチームは来季を見据え、高額年俸選手、もしくはベテランをシーズン途中に放出して、若手選手を集め直します。アスレチックスは松井でひと儲けしようとしても、今の成績では相手チームもシビアな判断をしてくるはず」(米メディア陣の1人)
優勝争いをしているチームは“ピンポイント”で選手補強する。左の指名打者、代打要員、もしくはセットアッパーといった具合に…。松井は左の指名打者か代打候補になるだろうが、2割1分3厘の低打率では相手球団が欲しいとは思わないだろう。
これから先復調し、爆発的な活躍を見せたとしても、アスレチックスは選手編成に関して“ドライなチーム”である。再契約できる補償は何処にもない。
「松井には3人目の快挙を達成してほしい」
現地特派員たちの間では、そんな声も出ているという。「3人目の快挙」とは、メジャーリーガーの年金対象選手のことだ。メジャーでは10年(1年を172日)以上プレーした選手は45歳から満額を受け取ることが出来、62歳から受け取ることにすれば、年間16万5000ドルが支給される。1ドル80円で換算すれば、1320万円。将来、外資両替レートがどうなっているか分からないが、NPBは同じ『10年強のプレーヤー』でも、約110万円程度(15年強の在籍選手は一律42万円/一部検討中)。比べものにならない待遇差である。歴代日本人メジャーリーガーのなかで、野茂英雄氏とイチローだけ。長谷川滋利氏も9年で引退しており、3人目となる最短距離にいるのが、今季9シーズン目を迎えた松井だ。松井も年金目当てでキャリアを重ねて行ったわけではないだろうが、「快挙達成を」と、周囲は応援しているのだという。
日本のオールスター戦のファン投票が始まるころ、NPB関係者の間では大リーグ機構との相違点が話題となる。NPBはメジャーリーグのように企業体としてビジネス活動を行っているわけではない。放映権、肖像権、商標権ビジネスは各球団が主体となっており、収入源といえるのはオールスター戦や日本シリーズの収益である。したがって、今夏もメジャーとの球宴開催が話題となり、企業体システムや選手年金にも話が及び、松井が有資格者になれるか否かも話題になったのだ。
「松井は1度スランプにはまると長引くタイプだし、もともと春先はそんなに成績が良くないんです。巨人時代は開幕から1カ月くらい、指揮官もそれを見越して我慢しながら使っていました。低迷するアスレチックスにはそういう余裕がないんでしょう」(前出・特派記者)
年金…。松井にすれば、「大きなお世話!」だが、このまま復調できなければ、来季のアスレチックス残留はもちろん、移籍先を探すのにも苦労するだろう。