大橋巨泉を筆頭に関口宏、石坂浩二、ビートたけし、竹下景子、藤子不二雄Aなどの人気芸能人、文化人が集結した「大人向け」のバラエティ番組を目指した本作は、当時の30代〜40代のサラリーマン世代の視聴者に受け入れられ、平成初期を代表する番組のひとつとなった。
さて、そんな『ギミア・ぶれいく』だが、放送中の1990年。己のジャーナリズムに徹しすぎたためか、全国放送に相応しくない衝撃的な映像を全国に向けて放送してしまったことがある。それが俗に語られる「TBSビデオテープ押収事件」である。
1990年(平成2年)3月20日、『ギミア・ぶれいく』は「テレビ初公開!ヤクザ組長襲名披露!過激取り立て現場に密着侵入取材!」なるタイトルのVTRを放送。
タイトルからわかる通り、この映像は実在する暴力団グループに番組が完全密着したもので、放送時間は10分程度だったものの、暴力団の組員が無抵抗の人間を事務所へ連れて行き、「ぶっ殺すぞ」「命がほしかったら金持って来い!」と脅迫する様子などが放送された。
この映像はTBSから委託を受けた『ギミア・ぶれいく』の制作会社が手掛けたもので、不審に思った警視庁が調査を行い、これら脅迫の映像が本物であることを確信。組長を逮捕し、5月16日にはこれら映像が収められたビデオテープ29巻を証拠品として差し押さえたほか、被害者から「事務所にビデオカメラを持った男がいた」なる証言が得られ、「TBSの番組が暴力団と協力し収録を行った」ことが明らかとなった。
TBS側はビデオテープの差し押さえ取消を求め、東京地裁に準抗告を申し立てたが棄却。その後も最高裁に特別抗告を行ったが、こちらも棄却されてしまい、テープは警視庁に没収されている。
この事件は、当時の新聞社会面でも大々的に報じられ、TBSは「視聴者の信頼を取り戻せるようにしたい」と謝罪した。ところが、この事件から6年後の1996年。TBSスタッフがオウム真理教関係者に取材テープを渡し、その結果3人の命を失う「TBSビデオ問題」が発覚。TBSは再度、「報道の在り方」を見直すこととなった。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)