問題視されたのは2月14日に放送された「高校中退芸人」。出演者のひとりが大阪府の西成区について「行かないほうがいい地域」「(生徒が投げないよう、学校の)椅子が机とつながっている」「9クラスあった学年は卒業時に、5クラスに減っていた」など、西成区内の高校のイメージを著しく低下させる発言をした。『アメトーーク!』は4月19日放送分で謝罪文を流している。
この問題は、西成区・大阪府立西成高校の出演者が「本当にあった話」として誤った情報を拡散し、笑い話にしたことで、迷惑を被る西成高校関係者がいたとして騒動になった。
さて、かつてお笑い芸人・はなわが佐賀県ネタで一世を風靡したように、特定の地域をターゲットにするのは必ず笑いが取れる鉄板ネタなのだが、昭和時代にはもっと過激な地域ネタが存在し、大クレームへとつながる事件があった。
「やんなっちゃった」の名フレーズで知られるウクレレ漫談の牧伸二(1934〜2013年)。とぼけた味わいのある芸人として人気を博した一方、地上波では放送できないような鋭い社会問題を盛り込む「時事ネタ芸人」としての顔を持つ芸人だった。
そんな彼のネタが問題視されたのが1987年2月。とある生放送の演芸番組に出演した牧は当時、公害問題で社会を騒がせていた神奈川県川崎市をネタにし、以下のような歌を歌ってしまった。
「川崎市の小学6年生は、5人に1人はたばこを吸っている。だから空気が汚れてる。あーあ、やんなっちゃった」。
むろん、川崎市には「5人に1人が喫煙者」というデータはない。「川崎公害」でこうむった「公害都市」というイメージからの脱却を図ろうと努力していた川崎市は大激怒。市教委はテレビ局に抗議文を提出し新聞記事にもなった。
テレビ局はすぐに謝罪し、牧本人にも厳重注意して事なきを得たが、しばらく牧は川崎市内から出入り禁止になったと伝えられている。末期といえど、やはり昭和時代の芸人は破天荒であった。
なお、余談だが、牧伸二は2013年に、東京都大田区と自身がトラブルを起こした神奈川県川崎市をつなぐ多摩川丸子橋付近で投身自殺。78歳の生涯を終えている。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)