こうした現状を「恋愛資本主義ピラミッド」と称することもあります。つまり、モテない圧倒的多数の男性が、ちょっと可愛い女性たちに貢ぐ。その女性たちが、少数のかっこいい男性たちに貢ぐ。こうしたピラミッド構造の中では、「非モテ」の男性は、結局、かっこいい「モテる」男性のための餌食に過ぎません。これは別名、キャバクラシステムとも言われています。
キャバクラシステムとはどんなものでしょうか。圧倒的大多数の客が、そこそこ人気のキャバクラ嬢に金を費やす。そこで儲かったキャバ嬢は、彼氏やホストに貢ぐ。つまり、客が使っている金は、人気のあるキャバ嬢の彼氏やホストに循環するシステムなのです。ピラミッドでもあるし、生物界の食物連鎖のようでもあります。
<食物連鎖の頂点のようですね>
ある日、私はツイッターで、こうつぶやかれました。私が<キャバ嬢に夕ご飯を奢ってもらった>と書き込んだからです。いや、それだけではないでしょう。その続きに、<(そのキャバ嬢は)他の客の同伴のために消えて行った>という内容も書き込んだからでしょう。
つまり、多少、順番が違うものの、同伴でポイントを稼ぐキャバ嬢から夕ご飯代を奢ってもらう、という循環システムの“頂点”に私がいたことになる、というのが、つぶやかれた原因です。
たしかに、言われてみれば、そう考えられますので、そこだけ見れば、うれしい限りです。とはいうものの、そのキャバ嬢が私に対し、「循環システム」通りにしているわけではありませんので、圧倒的な強者というわけでもないでしょう。
そもそも、彼女との出会いは、今はもうないキャバクラでした。そこで一度しか会っていません。指名すらしていなかったように記憶している。それからメールをしているだけの関係です。久しぶりに会った時には、顔を忘れてしまっている状態でした。
そんな関係の私に、いったい、彼女は何を求めているのでしょうか。もしかすると、同伴相手の候補としているのかもしれませんが、それを明言したことは一度もありません(これから?)。言葉にしているのは、恋人になれるかどうか、ということです。しかし、キャバクラ嬢のこうした言葉は、ほとんどが信用できるものではないでしょうが、私の場合、彼女の客だ、というほどの存在でもない(客になるのも、これから?)。
彼女のスタンスは、ご飯を食べていると、「もうすぐ仕事だから」といって、途中で退席してしまうところから、客ではなく、友達のような存在を求めているのか? とも思えなくもありません。そんな中で、夕ご飯を奢られたのです。システム上は「勝者」にはなりますが、今後、どのような関係になっていくのかは、私自身、楽しみなことでもあります。
とはいっても、彼女は、
「今度、(新宿)2丁目に行こう? その時に奢ってもらえればいいよ」
という言葉を残して去って行った。単に友達っぽい関係を求めているのか。じゃれ合っているのか。不思議な関係だ。
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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