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絶対に金とは言えない谷亮子

 五輪3連覇に外国勢が包囲網。「ママでも金」を狙う谷亮子(32)。日の丸ニッポンの金メダル第1号と期待され、本人も周囲も取って当然のムード。日本のメダルラッシュに勢いをつけてほしいが、絶対とは言えないウイークポイントが浮かび上がってきた。

 「大会序盤の柔道こそ、重要な役割を担っていると思う。特に(開会式翌日の)柔道で、谷か平岡(拓晃=男子60kg級)がどんな結果を出してくれるか。金メダルなら日本に勢いがつく」
 そう言って柔道の2選手に期待するのは、北京五輪日本選手団の福田冨昭団長。日本の国民の思いを代弁しているといっていいだろう。
 金メダルの第1号候補のひとりに挙げられた谷は、「『ママでも金』という素晴らしい記録に挑戦できる喜びを感じています。アテネ以上(の内容)の金を取れると思います」と自信のほどを披露する。
 6月末、日本アルプスの立山連峰で高地トレーニングに臨んだときは、「感性や感覚とか、道場のけいこでは身につかないものがあります」と余裕たっぷり。調整が計画どおりに進んでいるからこそ、畳を離れて英気を養うことができる。近づく大一番を前に、「計画どおりに、ここまで来ている。(本番が)楽しみです」と笑みを浮かべたほど。
 初めて金メダリストになったシドニー五輪を「念願が叶いました」と振り返り、4年前のアテネは「完璧な勝利」と自賛する。
 育児と柔道の両立。アテネまでとは違う環境にあるが、合宿などで家を出るとき、これまでは泣いていた佳亮くん(2歳)が「頑張ってね」と送り出してくれるのも励みになっている。
 「主人(プロ野球・巨人の谷佳知外野手)を初め、家族のサポートがあるからチャレンジできます。子供を見てもらっている両親もそうで、本当に感謝しています」
 周囲の理解と万全なバックアップがあるからこそ、五輪に臨めることを分かっているのが、かつての柔ちゃんとは違うところだ。

 世界に目を向けると、谷を取り巻く環境は一変する。
 1996年のアトランタ五輪決勝。初の金メダル、間違いなしと見られながら当時、無名で勝ち上がった北朝鮮のケー・スンヒが柔道着を左前にする奇策。僅差で敗れ、2大会連続の銀に。
 「その結果に、日本人だけではなく、世界中の柔道ファンが目を疑った。それほどの衝撃でしたが、3連覇がかかる今回、あのシーンの再現なしとは言えない」と警報を鳴らすのは、ベテランのスポーツジャーナリスト。さらに続けて、「世界の柔道は男子もそうですが、ポイントを取る掛け逃げが主流になっている。1本や技ありは目指さず、攻勢点をどう取るかに重きを置いている。谷が五輪を含む世界戦で強いのは、早くからそれに対応できたからですが、これには何より体力がいる。場数は踏んでいるといっても、谷はすでに32歳。体力面の衰えは否定できません」
 不安材料は、まだある。アテネ後、無敵だった日本人選手に敗れていることだ。2007年、全日本選抜体重別選手権で福見友子に、今年の全日本女子柔道選抜体重別選手権では山岸絵美にと2度の苦杯を喫している。
 「外国人選手と戦う五輪は、確実に金メダルを期待できる選手でなければならないとして、全日本柔道連盟は谷を代表に選んだ。谷ならどこからも文句がつくはずもない。しかし、日本柔道の将来を考えれば、それで良かったのかという疑問も残ります」(前出・スポーツジャーナリスト)
 「女子48kg級は谷が大本命。しかし、ケー・スンヒとの試合はもちろん、福見、山岸戦も各国はビデオで徹底的に分析してくる。金は絶対、といえるかどうか」
 とスポーツ紙の柔道担当は言う。そして、打倒谷の候補に、谷が07年世界柔道選手権で延長戦勝ちしたジョシネ(フランス)、昨年の嘉納杯国際大会を制したヤネト・ベルモイ(キューバ)を挙げるが、「もっとも怖いのは中国。誰が出てくるかまだ分からないが、研究し尽くしてくるのは間違いない。百戦錬磨の谷でも苦戦するかもしれない」
 女子48kg級が行われる8月9日まで、あと18日。谷は開会式には参加せず、いきなり本番で姿を現わすことになる。

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