捜査関係者をしてそう呆れさせたのは、大阪府警西成署に覚せい剤取締法違反(営利目的所持)容疑で逮捕された、大阪市浪速区在住の無職・木村丈被告(45)ら9人。彼らは、大阪市浪速区のビジネスホテルをアジトに、浪速区・西成区で、覚醒剤や大麻の“出張販売”を営んでいたのだ。
「西成のあいりん地区には『道のど真ん中で覚醒剤が堂々と売られている街』という困った異名がありました。彼らは数年前まで、その路上販売グループでした。しかし府警の取り締まりの強化やボランティアのパトロールが功を奏し、路上からは姿を消していたのです」(社会部記者)
売人が消えたのに、使用者は少しも減らないことを怪しんだ西成署は、グループを粘り強く追跡。ある常習者の供述からホテルの一室にたどり着いた、というわけだ。
「出張元となったホテルは、最近、浪速区や西成区で増えている“元・簡易宿泊所”タイプです。宿泊代は平均1泊4000円前後の低料金。利用者も、長期逗留の労働者やビジネス客、さらには関西空港から電車一本でやってきた外国人観光客など幅が広い。身元確認も形式的で、犯罪のアジトにはピッタリだったんでしょう」(地元不動産屋)
この手のホテルを舞台にした摘発は今回が初めてではない。
「2年前にも新今宮のビジネスホテルをアジトにした薬物販売が摘発されています。その時は、客はデリバリーで受け取るのではなく、ホテルまで買いに行ってました。一般客の目に触れることを恐れて1フロアまるまる貸し切り状態だったのですが、それがかえって怪しまれて摘発されています。今回は、当時の反省からか“分宿”でしょうね」(前出・社会部記者)
捜査関係者は、ほかにもホテルアジトがあるとみて捜査を進めるとともに、拠点を失った密売グループが再び路上でゲリラ化することを警戒しているという。イタチごっこは続きそうだ。