まず触れなければならないのはレース前半での“大惨劇”だろう。
全馬が1角を過ぎようとした時、後方を追走していたリノーンリーズンの脚元が急にフラフラになり(レース後、急性心不全と判明)、まず真横にいたナリタダイコクに激突。その反動で近くにいたタケミカヅチ、ダイバーシティが弾かれた。さらにその直後、リノーンがフジヤマラムセスに突っ込み、鞍上がともに落馬。そして、すぐ後ろにつけていたロードニュースター、アイティトップ、ドットコムは大幅に左へ振られてしまう。競走を中止した2頭を除くと、計6頭が致命的な不利を受けたことになる。
1〜3着馬はその“惨劇”の前方にいた組。優勝したダイワワイルドボアにまったく罪はないものの、後味の悪いレースとなってしまった。
殊勲の北村宏騎手は先週、落馬骨折から復帰したばかりで、快気祝いの重賞V。「春に比べてフットワークが良くなった。すごく手応えが良かったし、何とかなると思った。もっともっと良くなりそうなので、本番が楽しみ」と前向きに語った。アクシデントはあったが、春の実績馬マイネルチャールズ、ノットアローンを封じたのだから、ひと夏を越してグンと成長していることは確かだ。
上原師も「新潟を2回使って動きが素軽くなってきた。体と能力がようやく噛み合ってきた。(ダイワ)メジャーに比べるとおとなしいし、三千にも十分対応できる」と、本番(菊花賞)への手応えを感じている様子だった。
もともと“メジャーの後継者”として期待をかけていただけあって、この勝利は格別な味だろう。悔やまれるのは、スポットライトが別のところに注がれてしまったことか…。