麦畑や丈の長い草の生えている草原で円形に草が倒されているというもので、1970年代頃から世界中で大量に出現し始め、次第に直線を利用したものや円などの図形を組み合わせた幾何学的で複雑なものが確認されるようになっていった。後に、ミステリー・サークルの名所とも言われていたイギリスの穀倉地帯で、二人の男性がミステリー・サークルを作っていたと名乗り出たため、急速にミステリー・サークルは下火になった。恐らく、報道されたミステリー・サークルを見て人為的なものではないかと見破り、模倣した人物が多くいたのだろう。その後、現在もミステリー・サークルは出現し続けているが、ごく一部を除いた大半がいたずらによるものだとされ、中には出来の良さを競うイベントまで開催されている。
とはいえ、このミステリー・サークルの歴史は新しい物ではない。中世ヨーロッパの文献には、足につけた鎌で畑の麦を刈り取ってしまう「草刈り悪魔」という妖怪の伝説が残っており、その絵に記された畑の様子はミステリー・サークルと酷似しているのである。もっとも、これは倒稲や麦泥棒など様々な要因によるものを悪魔の仕業と見立てたものと考えられている。
ミステリー・サークルがUFOの仕業と考えられるようになったのは、1966年にオーストラリアで起きた現象が最初とされている。1月19日、クイーンズランド州のタリーにある農場で、灰色がかった青色のUFOが湿地帯から音を立てて飛び去っていくのを農夫が目撃。UFOがいたと思われる場所には、円形に葦が倒された跡が残されていたのである。この時確認されたミステリー・サークルは直径約9メートル、根元から倒されて水の上に渦を巻いていたことが解った。なお、この地域では後の調査で同様の「渦を巻いて円形に草が倒れる現象」が起きていた事が判明している。その後のミステリー・サークルの事例とは違い、人が入って作業しづらい湿地帯や水の中にも存在していたのが特徴的だ。また、後年のいたずらの例とは違い、この地域の事例では人為的に作製された痕跡が見あたらなかった。
果たして、このサークルを作製したのは本当にUFOだったのか。多くの人々が検証しているが、UFOの仕業にせよ、自然現象にせよ、未だに結論は出ていないものとなっている。
文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所