デビュー以来、無傷の3連勝。今春のピーターパンSの圧勝で本場でも認められたカジノドライヴに思わぬ落とし穴が待っていた。
まさかの逃走。テンを主張する馬がおらず、発馬直後のホームストレッチでハナに立ったカジノは歴戦の猛者たちの格好の目標とされてしまった。わずかキャリア3戦の若駒には、あまりにも厳しいレース展開。4F通過は47秒台半ば。ペースそのものが極端に速かったわけではないが、プレッシャーそのものがこれまでとは違う。4角で後続に並びかけられた時点ですでに余力は残っていなかった。
「スタート後、押し出される形でハナに立った。馬にとっては悪いペースではなかったし、気持ち良く流れに乗っていたと思いますが、4コーナーで並ばれた後は反応がなくなってしまいました」 手綱を取ったエスピノーザ騎手はこうレースを振り返ったが、スタッフからみれば、「負けて悔いなし」の騎乗だったとは言い難い。
「予想外の展開でした」。藤沢和調教師がポツリと漏らしたひと言が暗に“乗り違い”を強調しているようにも感じた。もっとも、敗因はそれだけではない。「スケジュール的に急仕上げになった」。渡米から約1カ月の間にステップレースを挟んで本番という過酷なローテーション。この夏、牧場から美浦への帰厩が当初の予定より遅れたことも少なからず尾を引く形となった。
歯車がすべて噛み合っても頂点を極めるのは難しい北米最高峰のレース。カジノはあくなきチャレンジャーとして臨んだが、今回はハンデが多すぎた。逆に不完全燃焼に終わった分、希望の光もある。「また来ますよ」。トレーナーは静かにそう語った。伸びしろがまだまだ見込める3歳馬。来年以降のリベンジに期待したい。