ストーリーとしては、密漁をする網元・高松家で、某国から嫁いできた妻のティナが息子・喜一と共に逃亡。しかし、高松家が跡取り欲しさに喜一を奪い去り、それを南原清隆演じるミリタリーオタクの星亨が仲間を集めて奪還するという流れになっている。奪還に関わる他のメンバーとしては、格闘技・特撮オタクの近藤みのる(内村)、PCオタクの田川孝(江口洋介)、無線オタクの水上令子(浅野麻衣子)、アイドル・改造車オタクの国城春夫(武田真治)、田川の連れてきた、旅行オタクの美女・湯川りさ(山口智子)などがいる。「オタク」という言葉が定着し始めた時期の作品で、主要メンバーに無線オタクがいるところが時代を感じる。
公開当時も大きなアピールポイントとなっていたが、内村のアクションシーンは、かなり頑張っている。とにかくキレキレに動き、劇中では格闘シーン中に、壁蹴り宙返りなども披露している。劇中で一番活躍シーンが多いのではないだろうか。まあ、ストーリー自体はオタクたちが、専門的な知識を活かして、悪いやつから外国人妻の子供を救出するという、単純なものだ。それでもコメディ要素と上手くマッチしており、観ていて楽しい作品ではあるはず。
しかし、登場するオタクたちの、知識の活かし方は中途半端な部分も多い事には言及しておこう。特にミリオタである星の「サバイバルゲーム(サバゲ)じゃ飽き足らない」という言葉には引っかかるものがある。要は、刺激を得るために今回の救出作戦を立案したと告白する場面などだが、サバゲ好きな人は、まずそんな言葉を発しないだろう。あれは死なないゲームとしてやっているから面白いのだから。ゴルフ同様、サバゲは審判のいない自己申告制の紳士的なスポーツであることを強調して欲しかった。
加えて、中盤以降に悪徳網元を裏切ってチームに参加する益岡徹演じる7人目のオタク丹波達夫にもっと掘り下げて欲しかった気がする。丹波は、かつて伝説のフィギュア(ガレージキット)原型師と言われた役どころなのだが、漁村というオタクに理解の薄い地域で生活する為に、すでに脱オタクをしている。劇中では、オタを辞めたが、妻や子供もいるので幸せだと、星や近藤に話すシーンはあるのだが、特に虐げられたエピソードも語らないので、地方に住むオタクの苦しさを表現する存在としての印象は、極めて薄いものとなっている。
あまりオタク要素を掘り下げると、オタクに悪意を持って歪めていると思われるので、薄めたのだろうか? この作品、オタクを扱っているが、殆ど“キモさ”を強調した部分がない、国城だけはアイドルオタクなので、後の創作物に頻繁に登場するステレオタイプなオタク像が若干みられるのだが、それでも抑えている。確かにその配慮のおかげで、分野の違うオタクたちにチームワークが芽生え、力を合わせて問題に立ち向かっていく王道な展開が、すんなり観る側には入ってくるのだが、もうひと癖欲しかった気もする。
結果的にキャラとして一番上手に動くのは湯川だろうか。脚本が『私をスキーに連れてって』などの脚本を担当した一色伸幸氏だけあり、ボディコンに身を包み、まだバブルを引きずっている当時の「イケてる女」感がかなりよく出ている。サバサバ感もちょうどよくて、外国人妻に金持ちの男をオトす方法などを教えるかたりも、それっぽいな、などと思ってしまうだろう。
全体的に無理矢理感のある展開ではあるが、まあ娯楽映画なので、肩の力を抜いて見ればそれなりに面白い作品ではあるだろう。しかし、なぜ敵役を網元にしたのだろうか? コメディなのだから、ヤクザとか、悪徳地方議員とかのほうが、より分かりやすかったような気がするのだが。密漁だって寒村の資金確保の為に仕方なくやっている訳だし。それで他の漁師が逆らえないのは問題もあるが…。所々でクズさを発揮するので、ありえないかもしれないが、仮に網元に感情移入をすれば、貴重な跡取りを奪った7人という印象になってしまう。
しかも、当の外国人妻は、ラストに子供を奪還して、送り届けると、別のお金持ち男性と良い関係になりボロアパートを出るところだったりする。結果的には母性を取り戻し、子供に駆け寄り、めでたしめでたしとは、なるのだが、その後の親子は幸せになれるのだろうか? 母親は特に専門的な技術を持ってなさそうなので、その美貌を活かして、水商売をやるのか? 現状維持の方が良かったのでは? と感じてしまうのは、心が汚いからなのだろうか。せめて、外国人妻が知り合った男性が、理解のある人物であることを願うばかりだ。
(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)