西尾維新といえば、『化物語』、『刀語』などアニメ化された作品もあり、最近では週刊少年ジャンプで連載中の『めだかボックス』で原案、原作を担当するなど、推理、怪奇、コメディ、バトルなど様々なジャンルの作品を送り出している。今、エンターテイメント系で随一の勢いがある作家といっていいが、今作はそれらのものとは毛色の違った内容になっている。作家本人をモデルとしたような主人公の視点で進む、自伝的要素の強い作品なのだ。
作家、西尾維新の誕生のきっかけとなった出来事が随所にみられるのだが、どこまでが創作でどこまでが実話なのか分からない。いつものエンターテイメント性の強い西尾作品を期待していると、そのギャップに戸惑うだろう。だが、遠まわしな表現や、脱線話で構成された独自の文章は健在。今まで出版された作品のネタも随所に散りばめられているので以前からのファンの人はよく探してみてはどうだろうか。
人気作家というだけあって、アニメ化された作品のセールスも好調。これから更に話題になることは間違いない。そんな西尾維新もっとよく知るのにはこれ以上ない作品だろう。これまで西尾作品を読んでいなかった人で、この文章にハマった人は他の作品を読んでみると良い。本作では殆どなかったコメディ要素なども充実してるので、また雰囲気の違った物語として楽しめるはずだ。(斎藤雅道)