「エースとして大きく育てたい。阪神のエース、日本を代表する投手に育てたいとの思いも強く持っています」(球界関係者)
今季不振の原因を投手出身のプロ野球解説者がこう説明する。
「ストレート自体は走っていると思います。でも、変化球が全て高めに抜けてしまうんです。ストレートが走っていて、変化球が制御できない状況が、投手にとっていちばん厄介なんです」
今さらだが、大炎上した日の舞台裏の話についても聞こえてきた。
「同日、その中日戦を中継した大阪のテレビ局は、放送開始時点で、藤浪はとっくに降板、1対7のワンサイドという、最悪の状況だったんです。藤浪が投げるから、大阪のテレビ局もそれなりの視聴率を期待していたと思いますが」(在阪記者)
伝統球団のエースである以上、さまざまなプレッシャーを背負うのは仕方ないことでもある。前政権下でのこと。優勝戦線から早々に脱落してしまうと、大阪のメディアは『阪神情報』で食えなくなる。そうなると、「期待の星」として、藤浪を特集してきた。執拗にメディアに追い掛けられるのは苦痛以外の何物でもないが、タテジマのエースと称された先輩たちはそれを乗り越えてきた。精神的にも強くなってもらうしかないのだ。
「昨年のちょうど今頃、藤浪は関西メディアの単独インタビューを受けています。そのときのインタビュアが矢野燿大コーチで、毎年終盤のチームの失速について質問されると、藤浪は『こんなふうでいいのか!?』と憤っていました。一歩間違えれば、内部批判ですよ」
藤浪はペナントレース終盤で失速するチームのなかにいて、闘争心を感じないと語り、だから自分が先頭に立って変えていきたいと話していたそうだ。その約1か月後、インタビュア・矢野は「作戦兼バッテリーコーチ」として入閣する。当然、その気概は金本監督にも伝えられた。おそらく、福留たちも藤浪の気概を知っており、エースとしてだけではなくチームそのものを背負って立つ存在になると信じているから、試合中にも関わらず、喝を入れたのではないだろうか。
「藤浪は頭の良い子ですよ。22歳なのにチーム全体のことを考えられるし、侍ジャパンに招集されると、他球団の先輩たちの話も聞き、さらに自分に合うものと合わないものを取捨選択しています」(前出・同)
ストレートは走っているが、変化球が浮いてしまう状況。それについて、担当コーチが修正の方法を知らないはずがない。だが、藤浪の将来を思い、あえて『答え』を教えず、自分で考えさせているのではないだろうか。藤浪が不振を脱したとき、金本監督の超変革は一気に加速するだろう。