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オバマ大統領 リムジン降りて歩いた

 黒人初のバラク・オバマ44代米大統領(47)就任式が20日(日本時間21日未明)、首都ワシントンの連邦議会議事堂前で行われ、危機突破を誓う就任演説に史上最大約250万人の観衆が沸いた。しかし、演説上手なオバマ新大統領の口から決定的なフレーズは最後まで飛び出さず、“名演説”は不発。日本時間同午前5時半すぎにはホワイトハウスまでの街頭パレードが始まり、装甲車並みの頑強さを誇る新型大統領専用リムジンから夫婦で車道に降り立った。暗殺の恐怖をものともせず、2度も“ラブ・ウォーク”するパフォーマンスを見せた。

 就任式は、人種差別団体による暗殺などを警戒し、軍や警察など計4万人の物々しい超厳戒警備態勢が敷かれた。随所にテロ警戒の目が光り、狙撃兵の姿も。氷点下のワシントンで、観衆は白い息を吐きながら新大統領の演説に耳を傾けた。
 「60年前に地元のレストランで食事すらできなかった男が、いまみなさんの前で最も神聖な誓いを立てている。われわれは共通の危機に直面している。でも米国よ、解決はできるのだ」
 堅実ながらも地味な内容だった。約18分30秒かけて経済危機克服に向けた決意を示すと同時に、責任あるかたちでイラクから撤退する方針を示した。しかし、リンカーンやジョン・F・ケネディのような“名ゼリフ”は生まれなかった。それでも、全米から集まった約250万人の観衆は歓喜の声を上げた。

 その後の祝賀会で民主党のE・ケネディー上院議員(76)が倒れるハプニングもあり、パレードは予定を1時間以上遅れて出発。専用車の両脇4隅に黒いコートを着たシークレットサービス4人が張り付き、周囲を警戒しながらペンシルベニア通りを進んだ。

 米国民の関心事は、パレード中、暗殺の危険性が高いオバマ氏が車道に降り立つかどうかだった。歴代大統領は専用車を降りて沿道の観衆に手を振ってきた。黒人大統領誕生を苦々しく思っている勢力があるにも関わらず、オバマ氏は危険を覚悟で車道に降りた。一向に車に戻ろうとしない。ミシェル夫人と片時も手をはなさず観衆の声援に笑顔でこたえ、約2.5キロのコース中、2度も歩いてゴール。強気と夫婦愛のパフォーマンスで“地味演説”をカバーした。

 米国には白人至上主義の秘密結社「KKK(クー・クラックス・クラン)」をはじめ、「アーリアン・ネーションズ」などのネオナチや、武装民兵集団「ミリシア」など危険なグループが数多く存在する。昨年10月には、オバマ氏暗殺を計画したとしてスキンヘッドの若者2人を逮捕。今年に入ってからも、UFOサイトに暗殺予告を書き込んだ男を検挙している。
 秘密結社に詳しいジャーナリストは「勢力が縮小しているKKKは、これを機に組織拡大をはかっているとみられる。行動に移すとすれば勢力が整うこの先か」と指摘する。人種差別するような連中には、これからも屈してほしくないものだ。

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