「斎藤は自ら降板を申し出ています。よほど痛かったのではないか?」
ネット裏のプロ野球解説者、及び報道陣からはそんな不安の声も聞かれた。
斎藤は中6日、日曜日に先発してきた。今後、『日曜日の戦い方』がどう変わっていくのか。それがチームの今後を大きく左右するのではないだろうか。「5回、100球」−−。これが、斎藤が先発した日の『降板の目処』とされていた。昨秋のドラフト会議以降、日本中の注目を集め、極度の緊張感によって斎藤佑樹は調整が巧くいかなかった。そのため、「5回、100球」の投球制限が設けられたのだが、一方で救援投手陣の負担も増えてしまった。
月曜日はゲームが組まれることはほとんどない。火曜日はダルビッシュが先発するので、日曜日に登板させた救援投手には2連休を与えられる。梨田昌孝監督はそんなふうに考えていたという。こうした事情を事前に聞かされていた関係者は「ダルビッシュだって救援を仰ぐことだってある。救援投手陣が登板過多でパンクしてしまうのでは?」と懸念していた。武田久と宮西尚生が11試合、増井浩俊が10試合、榊原諒と谷元圭介が9試合…。開幕から1カ月が経過した5月12日時点、10試合以上に登板した救援投手の人数は、ソフトバンク、ロッテが2人。西武はゼロ、楽天は1人。日本ハムとオリックスが3人。日本ハムの救援投手陣の登板数が突出して多いわけではないが、「9試合登板の投手」も2人いる。やはり、救援投手陣は登板過多の傾向は否めない。
斎藤は先発投手としての責任イニング(5回)は投げ抜いてきた。『代理の先発投手』が責任イニングを投げきる可能性は、斎藤よりも低くなる。救援投手陣の負担はむしろ増えるのではないだろうか。
また、昨季105試合に出場した正捕手・鶴岡慎也を故障で欠いた。こちらは3年目の大野奨太が奮闘しており、かねてから指摘されていた「ダルビッシュとの相性の悪さ」も克服しつつある。
「大野は基本的に強気の配球を好みます。味方投手がサインに首を振っても、基本的には要求する球種を変えないタイプ。でも、今は投手陣の信頼を得るため、球種を変えるときも少なくない。彼の持ち味が発揮されるのはまだ先のことかもしれません。外角中心の逃げの配球も多くなっている」
関係者はそんな不安要素も口にしていた。
打線では、中田翔がようやく一人前になりつつある。『ダルビッシュ対岩隈久志』のエース対決となった5月10日には、決勝打となる2ランアーチを放つなど、勝負強さも見せているが、首脳陣が求めているのは“継続”ではないだろうか。
「勉強したことがないのに東大に受かるようなヤツ。せめて、人の半分でいいから…」
そんな言い方をするチーム関係者もいた。
首脳陣は「右方向にも強い打球を飛ぶようになった」とも評していた。ギリギリまでボールを引き付け、内外角で打ち方を打ち分けているという。集中力が途切れる悪いクセが、いつ再発することやら…。首脳陣は100%の信頼をまだ置いていない。今の中田の好調は、嬉しい誤算とも言える。
ペナントレース突入前、4番手以降の先発投手の力量が懸念されていた。「5回、100球」の制限をつけ、斎藤でチームの弱点を補ってきた。その斎藤が交流戦を外れる。救援投手陣も疲労がたまっている。巨人に高橋信二を送り出したとき、日本ハムは若手投手の見返りを要求したというが、かなわなかった。余剰人員を作らない『編成方針』は間違っていないが、ペナントレース中盤以降は乱打戦も覚悟しなければならないようだ。(スポーツライター・飯山満)