今季初の一軍登板(8月1日)の後、即刻二軍落ちが通達された。阪神・藤浪晋太郎投手(25)の話だ。
中日との17回戦で先発登板のチャンスをもらったが、5回途中で降板。この日、投じた投球数は102。「四死球8」という数字が表すように、ノーコン病は改善されていなかった。
「春先、投球フォームをスリークォーターに変えて、二軍落ちしてからは2段モーションにまた変えて…。復帰登板では2段モーションを使わない場面も見られました。完全に自分を見失っている」(ライバル球団スコアラー)
「四死球8」も出しておいて、1失点で済んだのは奇跡としか言いようがない。
しかし、同日の甲子園球場ではこれまでと違う2つの光景が見られた。
まず、虎ファンの怒声が少なくなったこと。虎ファンは阪神選手がミス、失敗をすると、容赦なく罵声を浴びせる。それだけ愛情が深いわけだが、藤浪に対して怒らなくなったのは、「もう諦めた、見放した」ということではないだろうか。
また、5回表の中日の攻撃が始まる前だった。捕手・梅野がネクストバッターズサークルで自分の打順を待っていた。打順は回ってこなかったが、防具を外しており、梅野がそれを再び着用するのに時間を要していたため、藤浪の投球練習の相手を原口が務めた。その原口が捕れないほど、投球が荒れていたのだ。球場から失笑も漏れていた。「ピッチャー、交代」がアナウンスされたのは、その十数分後のことだった。
制球難、自信喪失。藤浪は二軍でどんな調整をしてきたのだろうか。何人かの関係者に聞いたが、「基本的には藤浪本人に任せている」という言い方だ。初めての二軍降格を通達された2017年5月以降、ほぼその方針でやってきたそうだ。
「制球難を克服する方法はいくつかあります。一例として、打撃投手をさせる方法がある。6、7割の力で投げることで、上半身、下半身の力の入れ具合、バランス感覚が養えるんです。藤浪は一人になっても、走り込みや基礎体力トレーニングをしっかりこなしています。だから、打撃投手として練習をさせたいんですが…」(チーム関係者)
ところが、藤浪には打撃投手の練習を課すことはできない。打撃投手とは、その名の通り、野手の打撃練習を手伝うこと。「打たせる」のが仕事だ。藤浪は特に右バッターに対する死球が多い。味方野手を故障させてしまう危険性があり、怖くてやらせられないというのだ。
「藤浪の年俸は8400万円(推定)までダウンしています。16年の1億7000万円から3年連続で落ちています。今季はさらなるダウン提示も必至です」(ベテラン記者)
素質は十分でも、復活には時間がかかる。1億円近くもらっているのだから、他球団もトレードをためらってきた。5000万円以下の年俸になれば、考え直す球団も出てくるだろう。もっとも、“環境”を変えたからといって、ぶつける危険性がなくなるわけではない。
「一軍の先発投手で確実に計算できるのは、西だけ。だから藤浪にチャンスが与えられたんですが、四球が多いと、守っている野手も集中力が途切れてしまいます」(前出・同)
バッピ(打撃投手)が務まるようにならなければ、藤浪はジ・エンドということだろう。(スポーツライター・飯山満)