しかし、動画の配信者は、必ずしも子供の目を意識しているとは言い難い。中にはコンプライアンスを逸脱した動画もあり、子供が真似をして問題になったこともある。中でも物議を醸したのが、2016年10月に発生した事案。人気YouTuberが公開した動画を子供が真似したため、クレームが殺到し炎上したのだ。
問題となった動画の内容は、フリクションボールペンで文字を書いたノートを電子レンジに入れ温めると文字がすべて消えるという動画。YouTuberが実践してみると、確かに文字が消えていた。
動画から数日後、あるブロガーが「子供が(フリクションペンとは知らずに)鉛筆で文字を書いたノートを電子レンジで温めたところ、爆発した」という趣旨の記事を公開。その中で実際に真っ黒に焦げたノートの画像を貼り付けた上で、「実際にやってみるとノートが焦げて黒焦げになり煙が上がった」と告白する。
当時執筆者とその妻は外出していたそうで、祖母が対応したが、かなりの煙が上がっていたそうで、「子供1人だったら生命の危険もあった」とし、「電子レンジで加熱することに注意喚起がなかった」「子供に対し両親といっしょにやってくださいというような配慮がない」「みんなもやってみてくださいと呼びかけるのは無責任」とし、「配慮が足りない」と糾弾した。
これに対し、YouTuber側は動画をアップし、「注意が足りなかった」と非を認め謝罪し動画を削除する。「小中学生が見てくれていることを意識して、言葉を選んで、みなさんに不快なことが起きないような動画を作りたい」などと話し、一応の手打ちとなった。
ところが、この話はこれだけでは終わらない。YouTubeの利用規約では13歳未満の子供による利用を意図しておらず、「あなたが13歳未満の場合、YouTubeウェブサイトを利用しないで下さい。あなたに、より適しているサイトが他にも沢山あります。あなたにそのサイトが適しているか、ご両親に相談してください」と記載されていたのだ。
この指摘が入ると、批判の矛先は親へと向けられる。「YouTuberも悪いけど、13歳未満の子供に動画を見せた責任はどうなるのか」「子供に自由に動画を見せている親にも責任がある」と批判が集まり、親は利用規約を知らなかったそうで謝罪することになった。
YouTuberと批判した親の双方が炎上することになった2016年の事案。実際のところ、「13歳未満はYouTubeを閲覧する権利がない」という利用規約を知っている親は少なく、子供が将来憧れの職業にYouTuberを挙げている事実から見ても、閲覧を許している親は現在も多い。
年々コンプライアンスを重視し、動画配信者の収益化対象審査を厳しくしていると言われるYouTubeだが、教育に適さない動画が散見される。親側は利用規約をしっかりと認識し、配信者側は子供の目も意識する。そしてYouTube側もしっかりとチェックをする。そのような3者の配慮が必要だ。