「両社のメインバンク、三井住友の奥正之頭取が仲介者として動いているようです。奥頭取は5月にTBSの井上弘社長と楽天の三木谷浩史社長の食事会をセットし、総会前の和解を促したのですが、結局は物別れに終わった。しかし、これ以上の長期戦は両社にとって好ましくないとの判断から再び仲裁役を買って出たといわれています」(金融筋)
楽天がTBS株の15.5%(後に19.86%まで高めた)を保有する筆頭株主に躍り出て経営統合を提案し、TBSとの攻防戦が勃発したのは一昨年10月。この間、楽天がTBSの株式取得に注ぎ込んだのは約1170億円。昨年12月期の連結営業利益が304億円だった楽天とすれば、本業の儲けの4倍に相当する“塩漬け投資”は重い負担となる。まして、TBSは資本関係を強化したビックカメラ、三井物産などと矢継ぎ早の業務提携に踏み切り、楽天の出番はない。
楽天・三木谷社長の誤算はTBSの6月総会で会社側提案の買収防衛策が77%の支持を得て可決されたことだ。
「この分だと三木谷社長が法廷闘争に持ち込んでもブルドックソースで惨敗したスティールパートナーズの二の舞になる。メインバンクが一肌脱ごうとしているのはそのためです」(前出の金融筋)
TBSは6月半ば、楽天に対する買収防衛策発動の是非について外部の有識者などで構成する「企業価値特別委員会」に諮問した。特別委は楽天の三木谷社長やTBSの井上社長などから意見を聴取し、9月12日までに楽天が「濫用的買収者」に該当するかどうかの判断を下す。特別委の委員6人全員が反対しない限り、TBSの取締役会は発動を臨時株主総会に諮ることができる。
「この防衛策はブルドックの防衛策と基本的に変わっていません。従って楽天が法廷闘争を挑んだとしても、臨時総会で決まってしまえば一発逆転は難しくなる。三木谷社長はTBS戦略の練り直しを余儀なくされた」(市場関係者)
市場筋は「特別委の判断が出る前に急転直下の解決があるのではないか」と打ち明ける。
「もし楽天が濫用的買収者の烙印を押されればイメージダウンに直結する。ただでさえ急落している株価が暴落しかねない。低迷している本業にも影響する。巨額の借金を抱えているため銀行だって真っ青になる。そんな最悪の事態になる前にTBSと手打ちした方が楽天はもちろん、メインバンクにとっても好都合というものです」
一部には、こんな見方もある。
「三木谷社長は頑固なワンマン経営者だからメンツに固執する。見返りに何の果実も得られないような株売却にスンナリ応じるとは限りません。5月に三井住友の奥頭取がTBSの井上社長との食事会をセットした際だって株売却とバーターでTBSの社外取締役就任を求め、井上社長が憤然としたというエピソードさえある。TBSが何らかの配慮を示さないと株売却に応じないかも知れません」(金融情報筋)
今や両社が頼るのはメインバンクである三井住友銀行しかいない。この分だと、9月早々にも電撃的な“手打ち”がありそうだ。