馬群がゴチャついた4コーナー手前。ブエナビスタが外へ出そうとした瞬間、後方にいたブロードストリートの進路をふさがれた。藤田はとっさに手綱を引き上げ、馬も完全に立ち上がる格好になったほど。「あれがなければ突き抜けていた」と言う鞍上の言葉も大げさではないほどの不利を受けた。
ブロードにとっても、ブエナにとっても後味の悪い結末。今度はスッキリ、ガチンコで勝敗を決める。藤原英調教師もリベンジに意欲を燃やす。
「秋華賞は前をカットされて完全に勢いを殺された。あの不利は痛かったし、その分の悔しさはここでぶつけたい」
過去10年間を振り返っても、3歳馬は5勝と他の世代を圧倒している。そのうち、2003年のアドマイヤグルーヴ、06年のフサイチパンドラ、昨年のリトルアマポーラは、秋華賞での敗北をバネにして女王杯を勝っている。しかも勢いは、いまやブエナを超えるものさえある。秋の上昇度では文句なしにメンバー中ナンバーワンだ。
「春は賞金加算がうまくいかなくて無理なローテーションが続いた。でもこの秋は狙ったレースを使える分、本来の能力を発揮できている。何よりセンスが良く、レースへ行けば100パーセントの能力を発揮してくれるのが強みだね」
レースへ行けば必ず、すべての能力を発揮するタイプが前走ではまさかの不利。それでもブエナとは0秒2差。すべてを出し切れば初のGI制覇も夢ではない。
「繊細な牝馬なので前走の不利の影響が心配だった。でもケイコではまったくダメージは残っていない。引き続きいい状態をキープしているので、何とかGIのタイトルを取らせてあげたい」
もう挑戦者でもなければ、打倒という言葉も使わない。因縁の再対決で、きっちりケリをつけるつもりだ。