この学校では、ダビデ像の写真を生徒に見せるときは、事前に保護者へ連絡していたが、今回は連絡をしていなかったため、1人の保護者が学校にクレームを入れたのだという。
たかがダビデ像の写真で辞任なんてと、多くの日本人は思うが、アメリカという国はキリスト教大国で、性に厳しい国なのだ。だから【子供に男性の全裸像を見せる】ということが、大問題に発展する。
『となりのトトロ』で、小学生の娘と父親が一緒にお風呂に入るというシーンも、アメリカでは児童ポルノや近親姦を想起するとしてカットされたのと同じだ。
さて、ダビデ像を所蔵する本家イタリアのアカデミア美術館は「ダビデ像をポルノと考えるのは、ルネサンス美術を理解していない」と反応。多くの日本人もこの美術館の意見に賛成すると思われる・・・
が、かつて日本でも同じような事件があったのだ。
いまから10年ほど前、島根県奥出雲町の公園に、ダビデ像が設置された。地元では「裸の像は教育上よくない」というクレームが入り、一部住民からは「ダビデ像にパンツをはかせて」という意見も出た。
このダビデ像は、地元出身者からの寄贈品で、町では「芸術を鑑賞できる。ありがたい」という意見と「子どもが怖がる」「教育上ふさわしくない。パンツをはかせて」という意見に割れて議論になったという。
このニュースを初めて見たとき、不肖わたくしは失笑してしまった。(すみません)
なぜか? 「子どもが怖がる」というのはわかる。これは子ども目線の意見で、ダビデ像は台座を含めると7メートルくらいの高さで威圧感がある。では「教育上ふさわしくない。パンツをはかせて」というのは誰の意見だろう?
何をもって教育上ふさわしくないのか?「パンツをはかせて」という要求をみればわかるように、クレームを言っている人は、ダビデ像の性器を問題としているのだ。
つまり『となりのトトロ』でアメリカ人が、サツキとメイの風呂場シーンを性の対象として見たがごとく、ダビデ像の下半身をかなり性的に意識したということだ。
芸術かポルノ(わいせつ)かは見る人の感覚や想像力で変わる。ダビデの像がポルノだと言う人は、あの像の下半身に反応しているのか~と考えると、思わず失笑してしまった次第。
(ちなみにダビデ像は15歳くらいの少年で、短小包茎に描かれている。15歳の少年の性器に反応しているマジメな大人たちを想像すると、ごめんなさいまた失笑してしまうのだ)
ちなみに鳥取のダビデ像は2018年に起こった地震で倒壊してしまい、今は設置されていないそうだ。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。