人生の半分以上をお笑いにささげ、俳優としてもコミカルから哀愁あふれる役柄までを演じたため、人脈は広く深かった。TOKIOの松岡昌宏は親友の一人だった。45歳の松岡は、18歳のころに出演した「なるほど!ザ・ワールド」(フジテレビ系)で上島と共演して以来、公私ともに親しくなった。年齢差は16歳。「松にぃ」「竜ちゃん」と呼び合っていた。年下の松岡が「兄」で、年上の上島が「ちゃん」。意図的な逆転だった。
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松岡は当然「竜兵さん」と呼んでいたが、「なるほど―」のときに上島の方から「竜ちゃんの方がおいしいから、竜ちゃんって呼んで」とオーダーされた。気さくに接してほしいという思いにプラス、10代の子からタメ口をきかれる構図を面白がったのだ。スポーツ新聞のベテラン芸能記者は振り返る。
「当時、松岡さんは相当バッシングされました。それでも世間の批判に耐え続け、『俺と竜ちゃんさえ分かっていればいい』と割り切っていました。この長尺コントに付き合っていたのが出川哲朗さん。2人が呼び合うたびに、『いやっ、逆逆!』とツッコミを入れていました。もっとも、最初は知らずに『そういうコントをやってたんでしょ?』と普通に聞いていましたが」
上島さんは、嵐・大野智とも親友。その大野主演ドラマ「怪物くん」(日本テレビ系)で12年前、松岡とドラマでは初共演。上島さんはオオカミ男、松岡は主人公の怪物くんの敵である悪魔族のデモキンを演じた。漫画・テレビアニメで40年以上にわたって愛された国民的作品とあって、放映時の松岡は子どもから嫌われていた。スタジオ見学に来ていた子どもが泣いてしまうことも多く、そばにいた上島さんが優しくフォローした。
日本中に優しさと笑いを届け続けた上島さん。大みそかの「第73回NHK紅白歌合戦」(NHK総合ほか)では、2人になった肥後克広と寺門ジモンに上島さんが生涯かわいがった有吉弘行が加わって、有吉が猿岩石時代に大ヒットさせた「白い雲のように」を歌うことが決定している。上島さんの魂は、こうして継がれていくのだ。
(伊藤由華)