明暗を分けたのは、阪神・藤浪晋太郎の「外角球」。村上宗隆が“ドンピシャのタイミング”で振り抜き、打球はレフトスタンドに消えた。
「どんなボールが来ても打つと決めていたみたい。ホームランは出来過ぎ」(関係者)
「外角球」が来るのは分かっていた。藤浪の速球にだけヤマを張っていた。
「見送れば、ボールカウントになる低めの直球でした。どんなボールが来ても打つと決めさせた村上の心境は分かりませんが」(前出・同)
試合前、藤浪の荒れ球が村上を困惑させると予想されていた。両者の対決はそれを上回る心理戦となったわけだが、藤浪と梅野隆太郎のバッテリーの心境を見抜いていた人がいた。“次期監督”岡田彰布氏だ。
>>ヤクルト・村上、藤浪の速球は打てない? アマチュア相手に露呈した不安要素は<<
「岡田氏がラジオ局の解説で神宮球場入りしていました。岡田氏は阪神戦の解説を続けていましたが、東京まで出向いたのは久しぶりでは?」(在阪記者)
その村上の逆転2ランが出たのは、3回裏。先頭打者の出塁を許すが、次打者のセーフティバントを見事なフィールディングで、一塁手・原口文仁が二塁送球のアウトにした。3番・山田哲人もセカンドフライで2アウト。“流れ”は完全に阪神サイドへ傾いていた。
「村上が打席に向かうと、捕手の梅野がマウンドに行きました」(前出・同)
梅野は藤浪の耳元で何かを伝えた。捕手として、“イヤな予感”がしたのだろう。
試合が再開され、梅野は体も左側に動かして、外角一辺倒の配球をする。
「四球で歩かせるつもりではなかったようです。勝負はするが、外角球。コントロールミスでド真ん中に放るな、と。外角球で勝負し、その結果が四球でも構わないという内容の打ち合わせでした」(前出・関係者)
ブルペンを見たら、西純矢が投球練習を行っていた。次イニングの阪神の攻撃は7番バッターから始まる。9番の藤浪にも打席が回ってくるので、「代打投入、交代」らしい。
雨の影響で30分以上中断する場面もあった。まだ3回だったが、阪神ベンチが配慮したのだろう。
村上の打球がレフトスタンドに消えた後、岡田氏は解説で「あれを打たれたら」と藤浪をかばったが、「力勝負に出ている」とも指摘していた。その指摘は試合開始から語られていた。村上以外の打者に対しても直球を軸にしている、配球が単純になっていると言いたかったようだ。
ここまでヤクルト打線を抑えてきたことで、バッテリーに「村上と勝負しても」の欲が出てしまったのかもしれない。
また、村上に一発が出た時点で敗戦を予感したのか、岡田氏はリーグトップのトラ救援陣についても触れ、「防御率がいいから抑えている感じはするけど、勝負どころで打たれてる。これだけ(味方野手が)エラーしてたら…」など、厳しいコメントが続いた。
就任後、救援陣の改造に着手するとの情報は間違いないようだ。
藤浪はメジャー挑戦の意向も表明している。それが了承された場合、村上に負けた今日が「最後のタテジマ姿」になるかもしれない。岡田氏のチーム構想に藤浪は入っているのだろうか。(スポーツライター・飯山満)