1959年(昭和34年)11月、東京都某所にある映画スター・山本富士子の自宅に不審な男性が「金を出せ」と果物ナイフを持ち、暴れる事件があった。
山本富士子は「お富士さん」の愛称で大映に所属する当時27歳の女優で、現存する日本のミス・コンテストで最も古い歴史を持つ「ミス日本」(著名な受賞者には叶美香、藤原紀香らがいる)の初代グランプリとしても知られ、前年の1958年には第9回ブルーリボン賞主演女優賞に輝くなど、押しも押されもせぬ大スターであった。
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夜7時頃、山本が自宅2階で休んでいる時、ベランダに見覚えのない男性用の靴が脱ぎ捨ててあるのを発見した。不審に思った山本がベランダの物置を覗いたところ、若い男性が果物ナイフを持ってうずくまっていたという。
驚いた山本は、悲鳴を上げて1階へと駆け降りた。1階には当時56歳の山本の母がおり、山本の母が廊下に飛び出した途端、男は「金を持っているだろう!」と言い、ナイフを突き付けた。山本の母はすぐに助けを呼び、お手伝いさんを通じて警察へ連絡し、犯人は無事に捕まった。
犯人は大阪府出身の16歳の少年で、自宅で読んだ映画雑誌に山本の建てた豪邸の写真が掲載されており、金に困っていた少年は大阪から強盗目的で上京。数日間の東京観光の後、山本の自宅近辺をくまなく調査し、2階の山本の部屋に侵入し、物置に隠れていたという。
襲われた山本は無事だったが、階段から降りる際に転んでしまい、顔に傷を負ってしまったという。当時は芸能人のプライバシーが守られておらず、雑誌や新聞に当たり前のように自宅住所の写真が掲載されており、特定は容易であったことが犯行を許してしまったのだ。