アメリカ・オハイオ州にある州立大学で、トランスジェンダーの男性学生が、男性を意図する代名詞で呼ばないよう同大学の男性教授に要望したにもかかわらず、教授が受け入れなかった件で、大学側と教授側の裁判の結論が出たと海外ニュースサイト『Law & Crime』と『USA TODAY』、『Miami Standard』などが4月19日までに報じた。
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報道によると、教授(年齢不明)は同大学で25年以上働き、宗教、哲学、倫理、キリスト教思想の歴史などを教えていたという。2016年、大学側は全教授に対し、学生を性同一性と一致した代名詞で呼ぶよう義務付けた。具体的には、全教授は学生の生物的な性にとらわれず、学生自身が認識している性に準じて学生をHe(彼)やShe(彼女)といった代名詞で呼ぶことを義務付けられたのだ。しかし教授はキリスト教徒としての自分の信念に反しているとしてそれを拒否。キリスト教徒の中にはトランスジェンダーを認めることが困難だと考える人もいる。
2018年のある日、教授は生物的には男性であるものの自らを女性だと思っている学生に対し、男性を意味する「Sir」という代名詞で呼んだ。学生は女性の代名詞で呼ぶように教授に依頼したが教授は拒否。大学側は何らかのきっかけで教授が学生に対して女性の代名詞で呼ぶことを拒否したことを知り、調査を行ったそうだ。調査の結果、教授が大学の方針に違反したとし、大学側は教授に懲戒処分を言い渡した。なお、この事件以前に教授とほかの学生の間で、性に関する呼び方を巡り問題が起きたという情報はない。
教授は懲戒処分を受けたが、学生の呼び方を強制されることは憲法上の権利の侵害であるとして同年に大学側を訴えた。2021年4月に大学側と教授が和解したことが発表され、大学側が教授に損害賠償と弁護士費用として40万ドル(約5138万円)を支払うことで合意したそうだ。合意に至った詳細は明かされていないが、一部報道によると話し合いの中で、教授の信念によって学生に対応することが望ましいとされたため、大学側が教授に賠償金を支払うに至ったという。
なお大学側はこの決定に関して「我々は和解をしたが、教授の信念を守る一方で、差別のない学習環境を作ることと、学生の権利を守ることに対しても全力を尽くす」といった内容の声明を発表している。
このニュースが世界に広がると、ネット上では「教授の方が問題だと思うが、大学側がお金を払うことに納得がいかない」「センシティブな問題だろうにこんなに事が大きくなって、一番の被害者は学生だと思う」「教授の考えもあるのかもしれないが、学生の気持ちが優先されるべき」「教授と学生、それぞれ別の角度で考え方があるから難しい問題」といった声が挙がっていた。
この度の決定は、今後同じような事件が起こった際の裁判にも大きな影響を与えることだろう。
記事内の引用について
「Philosophy Professor Who Refused to Use Student’s Preferred Pronouns Gets $400,000 Settlement from Ohio School」(Law & Crime)より
https://lawandcrime.com/high-profile/philosophy-professor-who-refused-to-use-students-preferred-pronouns-gets-400000-settlement-from-ohio-school/
「University to pay professor $400,000 after reprimanding him for refusing to use student's pronouns」(USA TODAY)より
https://www.usatoday.com/story/news/nation/2022/04/19/ohio-university-pay-professor-lawsuit-students-pronouns/7368551001/
「Ohio university to pay professor $400K after disciplining him for refusing to use a transgender student’s pronouns」(Miami Standard)より
https://miamistandard.news/2022/04/19/ohio-university-to-pay-professor-400k-after-disciplining-him-for-refusing-to-use-a-transgender-students-pronouns/