さらに、大偉業のもう一人の立役者が、この日の先発マスク、高卒ルーキー・松川虎生だ。この試合がプロ7試合目の出場となった18歳はゲームを通し、最終回の27人目の打者を仕留めるまで、堂々たるインサイドワークで佐々木の投球をリードしてみせた。
計19個の三振を奪った配球や、終始安定したキャッチングも披露し、投げ込まれる160㎞前後の剛速球や、落差とスピードを兼ね備えたフォークボールを難なく受け続けた。試合が進むにつれ、球場が異様な雰囲気に包まれる中、臆することなくプレーする姿は頼もしさと風格さえ漂わせている。
この日はバッティングでも見せ場を演出した。6回、2死満塁の場面では、オリックス先発・宮城大弥から、センターオーバーの走者一掃の特大2ベースを放つなど、パーフェクトゲームを攻守で後押ししている。
また、試合後に行われたヒーローインタビュー、お立ち台に立った佐々木本人からも「松川を信じて投げた。いいリードをしてくれた」と女房役への賛辞が並んだ。20歳の佐々木、そして18歳の松川、まさに28年ぶりの快挙は若きバッテリー2人により成し遂げられた大記録と言える。
だが、このインタビューの光景に、興奮を超え憤りを隠さなかった人物がいる。試合中継で解説を務めていたロッテOBの有藤通世氏だ。
試合序盤から佐々木のコンディションの良さを指摘し、さらには随所で松川のリードも評していた有藤氏。特に7回、バファローズの主砲・吉田正尚から見逃しでの三振を奪った場面では「今のはリードが見事」と配球を絶賛。それ故、お立ち台に捕手・松川の姿が無かったことに我慢出来ない様子がネットを通して伝えられている。「球団関係者は何で松川も呼ばないの?おかしいんじゃない!?」
現役時代、さらには指揮官としてもチームを率いるなど、「生涯ロッテ」を貫いた重鎮の熱い思いが、何よりもこの日の出来事の偉大さを代弁していたのかもしれない。(佐藤文孝)