ゲームセットの「歴史的屈辱の瞬間」も虎ファンは冷静に受け止めていたようだったが、同日の阪神ベンチを見ていて、気になる点もいくつかあった。
>>阪神・中野に「恥ずかしくないのか」怒りの声 前日のプレーもやり玉に? 失点招いた致命的ミスに矢野監督も呆れ<<
「巨人との3連戦を見た限り、打線は決して不調ではありません。投手陣を整備し直せばなんとかなりそう」(在阪記者)
投手陣の建て直しはもちろんだが、矢野燿大監督を始めとする首脳陣と選手の間に“ビミョ~な距離感”があった。
例えば、6回の攻撃だ。ベテラン・糸井嘉男が2ランを放ち、ベンチに帰ってきた。矢野監督は表情一つ変えず、グータッチの左腕を伸ばしただけ。糸井がそれに応えると、すぐにベンチの奥に戻ってしまう。
何人かの選手たちは意識して声を出し、重苦しい雰囲気を変えようとしていたのに、だ。
「代打、投手交代もコーチを介して伝えています。過去3年間もそんな感じだったんですが、ラストイヤーであり、チームが『歴史的屈辱』に見舞われそうな危機にある時だからこそ、選手に直接声を掛ける必要もあると思うんですが」(球界関係者)
試合後、矢野監督は共同会見で「オレらの野球をやるしかないんで。『超積極的』、『諦めない』、『挑戦する』とか」と答えていた。
積極性がないのは、首脳陣の方ではないだろうか。
「いや、矢野監督は『成長』という言葉をよく使います。連敗もそれを乗り越えたら、精神的にも強くなれるとの考え方です。一歩引いたところから見守っているでしょう」
そんな風に庇う声も聞かれたが…。
この連敗のスタート、つまり開幕戦のことだが、改めて振り返ってみると、単なる「1敗」ではなかったようだ。
ワンサイドで勝っていたゲームを1点差まで追い上げられてしまう。継投ミスは結果論だとしても、9回の最後のマウンドに送られたカイル・ケラーがまずかった。逆転負けを許してしまった。この時点では「初登板なので」と新クローザーを擁護する声もあったが、第4戦目の3月29日もケラーで敗戦してしまう。
「この試合後、ケラーのクローザー失格が明言されました」(前出・在阪記者)
矢野監督自らが今季のチームビジョンの崩壊を伝えたのも同じだ。
「昨季まで守護神を務めてきたスアレスがいなくなり、その補強に失敗したことが開幕連敗記録の原因です。新クローザーを見誤ったフロント、自前のリリーバーを育成できなかった現場、双方の責任です」(球界関係者)
矢野監督は4年目の湯浅京己を抜てきするつもりだが、先発陣からの配置換えを提案するコーチもいるという。
「コロナ感染で調整中の青柳晃洋が予定よりも早く戻って来れそうです。トレード、外国人投手の再補強の動きは今のところ見られません」(前出・同)
4月5日、本拠地・甲子園で初の公式戦を迎える。ファンの反応次第ではフロント幹部と矢野監督は、再補強について話し合わなければならないだろう。まずは、ホームランを放った選手の出迎え方を改め、その距離を縮めるべきだ。(スポーツライター・飯山満)