今回の騒動では、かつて日本で起こったアノ事件を思い出したという声も多い。2015年に亡くなった小説家の野坂昭如さんが、2013年に亡くなった映画監督の大島渚さんを1990年に殴りつけたもので、その瞬間の映像がネット上で出回っている。映像ばかりが拡散されているため、事件の背景や後日談はあまり知られていないので整理してみたい。
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事件が起こったのは1990年10月。場所は東京プリンスホテルだった。この日は大島さんと、妻で女優の小山明子の結婚30周年パーティーが開かれていた。この時、野坂さんは60歳、大島さんは58歳だった。
会の終盤、大島さんが野坂さんを壇上に呼び寄せる。大島さんは野坂さんが帰ってしまったと思い、まだ挨拶をしてもらっていなかったのだ。だが、野坂さんからすれば、「順番を飛ばされた」「忘れられた」という怒りと不満があったのだろう。さらに、待ち時間の間に野坂さんは酒を飲み“ベロベロ”の状態だった。お祝いの和歌を読み上げた後、大島さんに向かって右フックのパンチを繰り出した。大島さんも持っていたマイクで応戦し、会場には「ゴンゴン」という音が響いていた。その場には小山もいたが、笑みを浮かべている。
『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)で共演するなど、普段から親交のある二人だけに、ガチ喧嘩ではないと考えたのかもしれない。
大島さんはその場で謝罪。さらに野坂さんも後に大島さんへ謝罪文を送り、小山にもお詫びの品としてブラウスを贈った。2015年に野坂さんが亡くなると、小山は『スポーツニッポン』(スポーツニッポン新聞社)のインタビューに、「あれはもう笑い話。子どものけんか。私も笑って止めに入りました。どちらも子ども。でもあんな魅力的な男たちはなかなかいない」と振り返っている。
野坂さんと大島さんの場合は、元々親交のある当事者同士の話だが、ウィル・スミスのケースは妻も絡むものなので、簡単な解決とは行かなさそうだ。