3月29日のヤクルト戦で、ドラフト1位ルーキー・翁田大勢(登録名は大勢)が開幕から3登板連続となる3セーブ目を挙げた。ヒットこそ許したが、最後は青木宣親をショートゴロに仕留めると、グラブをポンと叩いて、小さくガッツポーズ。先頭バッターを三振に斬ってみせた時は雄叫びも挙げていたが、ゲームセットの瞬間は控え目に(?)喜んでいた。
「自信を持って投げています。クローザーは重圧の掛かる場面での登板となるのに、やり甲斐を感じているように見えます」
複数のプロ野球解説者がそう評していた。
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巨人が新人投手をクローザーに抜てきした前例はない。原辰徳監督も当初は「先発」として育てていくつもりだったが、オープン戦途中で方針を転換。1イニングを託した時の無双ぶりに「リリーフの方が合っている」と判断した。
「新人がクローザーを務める前例が巨人にはなかったせいか、チーム全体で応援している感じです」(球界関係者)
何人かの歴代巨人クローザーにインタビューしたことがある。言葉こそ違うが、彼ら必ず口にしていたのは「プレッシャー」だ。
抑えて当然、打たれたら、ボロクソに叩かれる。しかも、優勝を争っている中で、1球のミスが致命傷となる緊迫した場面での登板の連続…。歴代クローザーが長く活躍できなかった理由はその影響だろう。
「原監督も投手生命をすり減らすようにして投げ抜いてきた先輩たちを見てきました。大勢のリリーフ転向に即決できなかったのは、そのためでしょう」(前出・同)
大勢はその緊迫した場面でも“強気”になる。初登板こそ開幕戦独特の緊張感に飲み込まれそうになったが、その後は走者を出しても直球で力勝負を挑んでくる。
投手出身のプロ野球解説者がこう言う。
「直球に力勝負をしても勝てるだけの威力があるのは、本当です。力勝負を挑んで来るからスライダーやフォークボールなどの変化球も効果的に決まっているんだと思います」
今後、相手球団も投球モーションのクセや配球を研究してくる。それを乗り越えれば“ホンモノ”だが、原監督にとって一番の収穫は「チームの雰囲気」だろう。
昨季中盤以降、ビエイラがクローザーに定着した時、「登板と同時に今日は勝った」という雰囲気になったが、今年は少し異なる。
「大勢に繋ぐ」の勝ちパターンができつつあるが、ブルペン陣だけではなく、チーム全体が「大勢にセーブポイントを」と盛り立てているのだ。
大勢が3セーブ目を挙げた3月29日、ビエイラが試合前の練習に合流した。オープン戦は絶不調だったが、練習に合流したということは、一軍登録も近いはずだ。
「大勢をクローザーで使い続け、もし夏バテしたら、ビエイラと入れ替えるような。ビエイラはセットアッパーでしょう」(前出・同)
そんな予想も聞かれた。
大勢を囲む雰囲気がチーム上昇の機運に繋がりそうだ。息の長いクローザーになってもらいたい。(スポーツライター・飯山満)