>>元近鉄・金村氏「ヤクルトロッテの日本シリーズ寂しい」発言に怒りの声 首位球団への“難癖”が物議、興行的には旨味アリと指摘も<<
「絶対 大丈夫」。ヤクルトファンにすれば、「何を今さら?」の心境だろうが、ペナントレース終盤からそんなプラカードを掲げる観戦者が目立つようになった。東京ヤクルト・高津臣吾監督がミーティングでよく使うワードで、それが終盤戦の快進撃と重なって、ファンの間でも定着したらしい。
「この球場に来ると、打てる気しかしない」
そんなことを口にするライバル球団のスラッガーは少なくない。
神宮球場は両翼97・5m、中堅120m。ファールゾーンの広さはカウントしていないので的確ではないが、甲子園球場は両翼95m、中堅118m。フェアゾーンだけなら、極端に狭いわけではないのだが、フェンスが低いからか、広い球場を本拠地としている広島、中日の選手には「長打が打ちやすい」という“錯覚”を与えている。
セ・リーグ出身のプロ野球解説者もこう続ける。
「神宮球場に行ったら、ホームランの出やすい空中戦になると想定し、戦略を立ててきました。走者を溜めたら大量失点にもつながります。野手陣は対照的で、フルスイングしていますが」
その神宮球場の特徴を最もよく知るヤクルト投手陣は必要以上に警戒し、痛い目に遭ってきた。
ヤクルト投手陣は高津監督の「絶対、大丈夫」の言葉に鼓舞されてきた。しかし、神宮球場がCSの勝敗に影響しそうな理由はそれだけではない。
「今季、神宮球場はこれが見納め」
ヤクルトは、日本シリーズに進出しても、神宮球場を使用できないのだ。
日本シリーズは11月20日、パ・リーグ覇者チームの本拠地球場で開幕する。23日から3日連続でセ・リーグ覇者チームの本拠地が使われるが、同時期に「明治神宮野球大会」も開催される。大学、高校の球児たちにとっても神宮球場は聖地である。
「ヤクルトが日本シリーズに進出しても、第3、4、5戦は東京ドームが舞台となります」(球界関係者)
東京五輪の影響で、プロアマともに今季は野球スケジュールが後回しにされた。そのしわ寄せである。
昭和の時代にも同じようなことが起きていた。1978年、大学野球のスケジュールと重なり、神宮球場が使用できず、後楽園球場がその舞台となった。思い出されるのが第7戦で、ヤクルト・大杉勝男の放った大飛球を巡り、「ホームランか、ファール?」で大モメとなった。一時間以上にも及ぶ猛抗議で試合が中断し、今も“NPBの黒歴史”として語り継がれている。
もしも、今年の大舞台がヤクルトとオリックスで争われることになったら…。オリックスは78年の猛抗議を行った阪急ブレーブスを前身とするチームである。
「ヤクルトは東京五輪の影響で約2か月間も神宮球場を使用できませんでした。“資材置き場”にされ、いたたまれない気持ちになったプロアマの野球関係者は少なくありません」(前出・同)
その間、ヤクルトナインは練習場を確保するのにも苦労させられていた。セ・リーグの日本シリーズ進出チームを決める舞台・神宮球場で、波乱が起きるのではないだろうか。「絶対 大丈夫」の神通力は? (一部敬称略/スポーツライター・飯山満)