1971年は東映の『仮面ライダー』、円谷プロの『帰ってきたウルトラマン』など人気特撮番組が多数放送された年であり(俗に『第二次怪獣ブーム』と呼ぶ)、『ミラーマン』や『スペクトルマン』といった特撮ヒーロー番組も同年にスタートして、50年前の子どもたちを熱狂させていた。そんなヒーロー・怪獣ブームの中、「女の子」をメインターゲットにした異色の特撮番組が放送されていた。それが『好き! すき!! 魔女先生』である。
『仮面ライダー』と同じく石ノ森章太郎(当時・石森章太郎)の原作作品で、アンドロメダ星雲アルファー星人の「月ひかる」が小学校の教師として赴任。地球人と生活を共にし、時には「アンドロ仮面」という仮面ヒーローに変身して悪と戦うというストーリーだ。
2クール全26話で終了していることもあり、有名な作品とは言い難いが、当時女性が主役の特撮番組は珍しく、ファンも非常に多かったようだ。
だが、『好き! すき!! 魔女先生』はその内容よりも、放送後に発生したある事件が有名な作品となっている。主人公の月ひかるを演じた女優・菊容子は1975年4月29日、当時交際していた俳優の男性に電話機のコードで首を絞められて殺害されたのだ。
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犯人男性が菊を殺害した動機は「男の嫉妬」であったという。菊は『好き! すき!! 魔女先生』放送後は、期待の若手女優として多数のドラマに出演。一方、犯人の男性俳優は無名に近く菊とは大きな収入格差があった。
そして、犯人の男はある出来事をきっかけに、「容子に新しく好きな男ができた」と思い込み、別れるよう説得する際に話がもつれ、首を絞めて殺害したという。
犯人の男は菊を殺害した後、逃げるように車に乗り込み逃走したが、動揺していたのか事故で大怪我を負い、警察に見つかり殺人容疑で逮捕された。
この突然のニュースに、『好き! すき!! 魔女先生』を見ていた子どもたちは大きなショックを受けたという。
『好き! すき!! 魔女先生』は長らくソフト化がなされていなかったが、現在はDVDやネット配信などで視聴可能だ。放送開始50周年、菊の冥福を祈る意味でも改めて再評価が期待される作品である。
(文中・敬称略)