監督は、クレール・ドニ、マーティン・スコセッシ、エミール・クストリッツァ、アベル・フェラーラなどの個性派監督作品に出演していた俳優であり、ミュージシャンであり、画家であり、モデルでもあったアーティスト、ヴィンセント・ギャロ。そんな彼が初めて監督に挑んだ長編映画だ。当初は『断絶』(71)のモンテ・ヘルマン監督で企画を考えるも、最高の作品にするためには自身のすべてを注ぎ込む必要性を感じ、結果監督・脚本・音楽・主演の4役をこなすことになった。
同作には、1991年に行われた第25回スーパー・ボウルの勝敗を生かしながら、ギャロ自身の子供時代の経験と感情が脚本に盛り込まれている。意表を突く状況設定、意外性のあるドンデン返し、そして最高のハッピー・エンディングで、ダメな男の人生模様を最高にカッコ良く描いた。ブチ切れやすいのになぜか憎めない男と、彼の全てを優しく受けとめるポッチャリ系美少女という従来の恋愛映画では絶対主人公になりえない2人の、誰も見たことのない恋物語になっている。
ダメ男の相手役であるレイラを演じるのは『アダムス・ファミリー』(91)のクリスティーナ・リッチ。またオスカー女優のアンジェリカ・ヒューストン、ジョン・カサヴェテス作品の常連、ベン・ギャザラ。『グラン・ブルー』(88)のロザンナ・アークエット、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(85)のミッキー・ローク。『ビッグ・ウェンズデー』(78)のジャン=マイケル・ヴィンセントなど脇を固める俳優陣も個性的で豪華な顔ぶれが揃っている。音楽はギャロの自作曲のほか、英国プログレッシブ・ロック界の二大巨頭イエス、キング・クリムゾンらの楽曲も使用、サントラ盤も大きな話題となった。
そんな本作は初公開以後、他の作品に関連したイベント上映などで数回上映が行われてきたが、久々に渋谷ホワイト シネクイントにて公開が決定。ロードショー公開は約20年ぶりとなる。
・ストーリー
刑務所を出て故郷の街バッファローに帰ろうとしていたビリー。誰も迎えに来ずひとりぼっち。挙句の果てに何も事情を知らない両親に電話をかけ、“これから婚約者を連れていく”と大見栄をきってしまう。偶然通りがかった少女レイラを拉致し恋人のフリをするよう脅し両親と無事対面。一方レイラは同行するにつれビリーの孤独な素顔を知り優しく接しようとするが、彼にはやり残した事があった—。
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