本当に空飛ぶ円盤に乗って地球にまで訪れているかどうかは別としても、宇宙には無数の天体が存在している。地球と同じような条件に恵まれ、知的生命体が存在する天体も低い確率だが、あるはずだ。そういった考えから考案されたプロジェクトが地球外知的生命体探査(Search for extraterrestrial intelligence、略称SETI)だ。
>>宇宙人に誘拐され、子どもができた!?衝撃的なアブダクション体験の背後にあるもの<<
電波望遠鏡で宇宙から受信した電波を解析して人工的な信号を探すというもので、逆に地球の側からも宇宙人へ向けて電波を送る試みも行われた。こちらはアクティブSETIと呼ばれ、その嚆矢(こうし)となったのが1974年、プエルトリコのアレシボ天文台から送られた「アレシボ・メッセージ」だ。
0と1の組み合わせで、数字や太陽系の図と地球の位置、簡単な人間の姿とDNAの構造などが一覧になっているもの。このメッセージについてはちゃんと電波が届くのか、読み解くことができる内容なのかという疑問もあった。だが、そもそもこのメッセージはアレシボ天文台の電波望遠鏡が同年に改装されたことを記念して行われたものであった。内容はともかく「送ること」に意味があったと考えた方が良いだろう。
そんなアレシボ天文台が、現地時間12月1日の深夜に崩壊したという報道があった。アレシボ天文台のシンボルは巨大な電波望遠鏡だ。くぼ地を利用して直径305メートルの反射面の上に、受信機が3基の塔からケーブルでつり下げられる構造になっていたのだが、主鏡の上に受信機が落下して崩壊してしまったのである。
アレシボ天文台は1963年に建設されて運用されてきたが、2017年のハリケーン「マリア」と2019、20年、立て続けに起きた2度の地震によって望遠鏡が損傷。受信機を支えるサポートケーブルが2本断線し、補修を行うにしても作業が困難であること、また50年以上運用され、施設の老朽化が激しいこともあって、11月には電波望遠鏡の解体が決定されていた。
ところがその後、残りのケーブルを支える部分が壊れ、重さ約900トンの受信機が約140メートルの高さから主鏡の上に落下し崩壊してしまった。天文台に併設された学習センターなども被害を受けたそうだが、人的被害はなかったという。
なお、今後は被害を受けなかった箇所を調査し、運用を回復する方法を模索するとのこと。解体が決定した後も、天文台はデータ解析等研究のため存続される見込みであったので、新たに生まれ変わるのかもしれない。
(山口敏太郎)