「この登板が『最終テスト』と位置づける阪神OBもいれば、一軍戦力として期待できるのかどうかの最終判断と位置づけていた関係者もいました」(球界関係者)
今の藤浪は、これまでとはピッチングスタイルが明らかに異なる。この8月5日の巨人戦前日、“新ピッチングスタイル”を巡って、両極端な意見がぶつけられていたという。「スライダーが生命線になっているようだが、このままで大丈夫か?」――。
話は、復帰2戦目の前回登板(7月30日)に遡る。味方のエラーで敗戦を喫したが、好意的な声が多く出ていた。しかし、一部からは「スライダー中心のピッチング」と首を傾げる声も出ていた。
「スライダーを多投したことが悪いという話ではありません。復活を信じられない最大の理由は、直球がシュート回転していること。勝負球がスライダーだけなんです」
関西方面で活躍するプロ野球解説者がそんなことを話していた。
さらに、同日のヤクルト戦を振り返って、こう指摘していた。
「ヤクルトの高津臣吾監督は左バッターを8人も並べる“変則打線”を組みました。ノーコンで、ボールでシュート回転している藤浪にぶつけられ、ケガでもさせられたらという逃げの発想です」
同日の藤浪だが、確かに右バッターにぶつけていたかもしれないという“抜け球”もいくつかあった。右バッターボックスに立ったスタメン選手は1人だけなので、結果的にそれに救われたのだろう。
「前々回登板の23日ですが、広島のピレラに逆転の満塁ホームランを打たれています。決勝の満塁ホームランを打ったピレラ(右打ち)は、藤浪のスライダーに狙いを定め、右足を踏み込むようにしてフルスイングしています」(前出・プロ野球解説者)
広島の他の右バッターは“ぶつけられる”という先入観で踏み込んで打つことができなかった。来日一年目、藤浪のことを知らないピレラだから、踏み込んでスライダーを狙うことができたわけだ。
「5日に試合を決める適時二塁打を放った巨人・岡本(右打ち)も、やはり踏み込んで外角のボールをフルスイングしていました。巨人の右バッターたちは『ぶつけられても絶対に踏み込んで打て!』の指示が出ていたんだと思います」(前出・球界関係者)
矢野監督は「攻めのピッチングをしていた」と一定の評価をしていたが、藤浪で試合を落としたため、借金2。ペナントレースは苦しい展開となってきた。
データを改めて見直してみたが、阪神は8年続けて巨人戦に負け越している。現在の巨人は独走態勢を構築しつつあるが、矢野監督がこの3連戦を深刻に捉えていたかどうか、疑問に感じるところがある。
大事な巨人3連戦の先発を託したのは、ガルシア、藤浪、高橋遥人。高橋遥人は二軍から昇格したばかりで“ぶっつけ本番”となる。ガルシアは今季6戦未勝利、藤浪に関しては説明するまでもないだろう。せめて、西か青柳の登板間隔を明けて、どちらかをぶつけていたら、ケンカは違っていたはずだ。
これで、藤浪は対巨人5連敗。16年4月5日以来、巨人戦で勝っていない。巨人がこのまま突っ走った時、スライダーと直球を外角に集める“逃げの投球”が「G打線を勢いづけた」と指摘されるだろう。(スポーツライター・飯山満)