だが、ポストシーズンでは、屈辱の記憶だけが刻まれている。前年同様、受けて立つ側として、ソフトバンクを迎え撃ったクライマックスシリーズ。西武はアドバンテージの1勝以外は全て黒星、つまり4連敗という結果に終わる。さらには、森自身の打撃成績は4試合で僅か2安打と、主軸として完全に期待を裏切る結果となり、加えて守備でも勝負所でのエラーを犯す。2年連続同じ相手を前に、シーズンの幕引きが本拠地でのCS敗退という無残な結末は、その後の森への痛烈なバッシングを引き起こすには、充分なシチュエーションだった。
栄光と苦悩、両方を味わった昨シーズンの結果を糧とし、現在は新しい戦いを見据えている。
「開幕に向け最高のコンディションを作っていく。フルスイングを多くのファンに届けたい」
誰もが待ち焦がれた、今季のリーグ開幕日が6月19日に決まったことが伝えられると、パ覇者の若き正捕手は力強いコメントを語った。また、5月20日には、夏の全国高等学校野球選手権大会中止のニュースを受け「そこで優勝できたからこそ今の自分がある」と、夢舞台の想いと共に、球児に寄り添う言葉も残している。
名実ともに球界を背負う立場となった森友哉の果たすべき役割は、極めて大きく、そして数え切れないものとなったことは明らかだ。
今季、リーグ3連覇を成し遂げるべく、来たるべき新シーズンに挑む。同記録は、パ・リーグでは94年まで5季連続制覇を果たした西武以来の快挙となる。かつての黄金期のような無類の強さを取り戻しつつある現在、豪打を揮う新しいスタイルの「扇の要」として、更なる輝きを放てるか。
何より、試合数の制限、交流戦・球宴の中止など、シーズンの様相が例年とは大きく変わり、勝敗以外でも特別な意味を持つ今季のペナントレース。日本を代表するプレーヤーとなった今、野球界に、そして日本全国に、笑顔と活力を鮮やかなフルスイングで届けること、それこそが今季の森友哉の使命だ。(佐藤文孝)