毎年この時期になると衝動を抑えきれず、普段は魚釣りへ向ける情熱を潮干狩りへ全力投球するワタクシ。編集部から「貝はやめて下さい」とクギを刺されておりますが…。
「今年も掘って掘って掘りまくるぞぉ〜」
編集部の要望など、ガン無視です。だってワタクシ、掘るのも、舐めるのも大好きなんですもの、貝を。
ということで、シーズン初の潮干狩りを楽しむべく、千葉県市川市の江戸川放水路へ出かけました。
放水路といっても、平時は分水部の堰が閉められており、河川のような水の流れはほぼありません。そして、干潮時に露出する干潟では、潮干狩りや釣りが楽しめるのです。
ここは都内近郊では有名な潮干狩り場であり、かつては船遊びではあるもののハマグリが大量に獲れました。
しかし、昭和33年に製紙工場から流入した排水によって大半が死滅し、それに怒った漁民が暴動を起こすという事件が勃発しました。その結果「水質汚濁防止法」が制定されるという、曰く付きの過去があるのです。
現在まで潮干狩りや釣りが楽しめるのは、気骨ある先人の尽力があってこそ。令和の時代に至るまで、便利さと豊かな自然を享受できることに感謝の念を抱かずにはいられません。
★ガツッ! に興奮 抜いたらガクッ…
さて、話を潮干狩りに戻します。干潮前に現地に到着したのですが、すでに大きな干潟が露出しておりました。たまたま平日に出向くことができたため全体的に空いており、人影は沖のほうにパラパラと見える程度です。
沖まで歩くのも面倒ですし、何より早く掘りたい衝動を抑えることができず、近場から手当たり次第に掘っていきます。この日、道連れにした知人の子供は「沖に行こうよ〜」とワタクシの手を引いていましたが、そんなのはガン無視です(子供以上に衝動的なオッサンなので…)。
何せ今シーズン初の潮干狩りですから、干潟に点在するカニやら貝類が開けたであろう穴を見るだけでワクワクします。この雰囲気がたまらんですなぁ。
では、さっそく…。ハァハァ! と鼻息荒く掘り進むと、熊手の先から「カツカツン!」と手応えが伝わってアサリやシオフキが出てきました。んが、いずれも小さい…。
「来年楽しませておくれ」
ようやくオトナの余裕を取り戻して、小さな個体は干潟に戻します。
「デカいホンビノスか、あわよくばハマグリでも出てこんか〜いっ!」
そう念じてさらに掘り進めていると、傍らで黙々と掘っていた少年から「何か大きいの獲れた〜」の声が。
彼が手にしていたのは、オキシジミでした。ご存知ない方も多いかと思いますが、サイズが大きい割に味が今ひとつ…という評価のため、持ち帰る人が少ない貝です。
「あぶねぇ〜、ガキに先を越されるところだった」などと思いつつも「大きいねぇ! よかった、よかった」と適当にあしらって、自分が掘ることに集中です。
ザリザリザリ(砂を掘る音)、ガツッ! おっ、よい感触♪ 手応えの先に手を突っ込むと、何やら大きめな貝が…。この瞬間こそがカウパーものなわけでして、下着に何か染み出す感覚を感じながら、砂泥から抜き出したのは、オキシジミ!
その後もひたすら掘りまくり、オキシジミを10個ほど確保しました。
「沖から戻ってきたオジサンは、アサリやホンビノスを持っていたよ! でも、オキシジミが獲れて楽しかった〜」という子供の声に「そだね…」と力なく返し、陸に上がりました。嗚呼…。
★大型は臭うがチビは許容内
オキシジミと言えば…、以前に東京都の多摩川で獲った物を焼いて食べたのですが、都市河川特有の臭いが強かった記憶があります。
しかし、最近は市場で見る機会が増え、ハマグリの産地として有名な三重県の桑名産も売り出されています。ということは、ひょっとしたらイケるかも…。
念のためガーリックを効かせた白ワイン蒸しにしていただきま〜す。
結論から言いますと、大型はやはり臭みがあるものの、小型はさほど気になりません。考えてみれば、普通のシジミも臭みを感じることが多く、ある程度は仕方ないのかもしれません。
とは言え、身近な都市部の干潟で「ガツッ!」と手元にくる感触と興奮が味わえて、帰宅後は美味しい料理が楽しめることはありがたいこと。そう思いつつ、白ワインをクイッと飲み干す春の夜でありました。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。