沖縄本島=約130万。(うち那覇市が約78万)
この連載にしては珍しく、いきなり統計的な数字の提示から始めてみました。
実はコレ、沖縄県内の人口分布の比較。単純にこれだけ差があるのですから、当然、釣り場を訪れる人の数もケタ違いです。同県内ではありますが、本島の釣り場では場荒れ(釣り人過多による魚の減少)が進んでおり、特に市街地の海辺では“誰でも、簡単に、美味しい魚が数釣れる”というのは難しくなっています。
それに対し、石垣島の漁港で竿を出した前回のお話では、のんびりと午後から竿を出してサクッと美味魚(オジサン)を確保できました。離島である沖縄ですらこうなのですから、東京、名古屋、大阪、福岡といった大都市近郊の釣り場は言わずもがな。特に大都市近郊の人気釣り場ともなれば、これから暖かくなるにつれて陽気のよい休日は大いに混雑しますからなぁ。
★テキトー釣りで天ダネ連発!
余談が長くなりましたが、前回の続きからお話を始めます。
いきなりのオジサン確保に気をよくし、エサを付け直した仕掛けをサザンゲートブリッジ下の水路に投げ入れます。
「さすがは石垣島!」
そう唸りたくなるほど即座に「ククンッ!」とアタリが出ました。願ってもない展開にご機嫌で巻き上げると、オグロトラギスがハリをくわえておりました。沖縄ではよく目にする小魚であり、オジサン以上に雑魚感の強い外道です。とはいえ、この反応の早さは場荒れが進行していない証左であり、喜ぶべきことです。
一般的にあまり知られていませんが、トラギスの類いは天ぷらにすると非常に美味。ここで釣れたオグロトラギスは型もよく、丸々と肥えておりますから、当然のようにクーラーボックスへ直行です。
その後も投入のたびに反応があり、オグロトラギスの他にアカテンモチノウオなどが飽きずに掛かります。
それほど苦労することもなく、のんびりと打ち返しを続けただけで、晩の肴には十分の量を確保。ガツガツと深追いすることなく、鼻歌まじりで竿を納めました。
タマン(ハマフエフキ)やガーラ(大型のヒラアジ類)といった華やかな大物を仕留めたわけではありませんが、市街中心部に至近の水辺からチョイと竿を出してサクッと美味しい魚が釣れるのですから、実にありがたい環境であります。これだから離島釣行は楽しいのよね〜
★衣厚めゆえに中はジューシー
このオグロトラギス、珊瑚礁内の砂地や港内などでよく掛かり、沖縄では“なじみ深い定番外道”といった存在です。
白地に黒い破線が縦横に並ぶという、南方系としてはやや大人し目な色合いですが、そのルックスはけっこう個性的。ただ、前回釣れたオジサンを含めて赤や青といった色味の強い魚種が多い土地ですから、その点では少々地味かもしれません。
こういった派手な魚が少ない関東以北では、熱帯系の魚の食味に対して強い先入観があることは否定できません。しかし、前回食したオジサンも含めて、旨い魚が実は多いんですね。
「人も魚も、見た目で判断してはイカン!」
フリーで入った店で、あてがわれた相手のビジュアルにガッカリ…であっても、プレイが始まったらメロメロにされてしまう。こんな例えをすれば分かりやすいでしょうか。
ということで、手際よく確保したオグロトラギスは、定番レシピともいえる天ぷらにしていただくことにします。とは言っても、よくある江戸前風で調理してしまうのは野暮。せっかく石垣島産ですから、ご当地風の調理法でいただくことにします。
味の評価をする前に簡単に説明を。
沖縄の天ぷらは、味が付いた衣を厚めに付けて揚げるのが特徴です。ただ、作り慣れていないために、必要以上に衣を厚くしてしまい、出来上がりの見た目が“チ〇ポのフリッター”みたいになってしまいました。身につまされて食欲が湧きません…。
でも、意を決してガブリ。衣が厚いせいか身が蒸されたような食感です。揚げ物ならではのホクホク感よりも、ジューシー&プリプリで白身の濃い旨さが感じられます。
そして、フルーティーな香りの強い『石垣島地ビール ヴァイツェン』との相性が、また抜群! スナック感覚でアッという間に完食してしまいました。
「もっと欲張って釣ってもよかったかな…」
想像以上に激ウマな天ぷらを楽しみ、南方魚の奥深さをあらためて実感致しました。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。