オープン戦最終戦(3月15日)で、松坂が「3回被安打1失点ゼロ」と好投したのは、既報通り。辻発彦監督も「上出来。良くなっている」と“合格点”を与えたが、復活と見て良いのだろうか。かつて、「平成の怪物」と称されたベテランは、今季40歳を迎える。シーズンを通して投げ続ける体力も「ない」と思うのだが…。
同日に対戦した東京ヤクルトの関係者がこう言う。
「ベテランならでのピッチング。ランナーにではなく、バッターに対してクイックモーションを使ってタイミングを外したりして」
変化球主体のピッチングだった。同関係者によれば、同じ球種でも曲がり幅を変えてバットの芯から外させていたという。
こうしたピッチング内容を聞かされると、肩、肘の故障さえなければ、「そこそこイケるのは?」と思えてくる。しかし、
「タイミングを外すテクニックが通用するのは、打者一巡のみ」(スポーツ紙記者)
という厳しい声も聞かれた。
また、投手出身のプロ野球解説者がこう続ける。
「松坂が通用するかどうか、そのポイントは左足を見れば分かります。投げ終わった後、体重が左足に乗っていません。今の松坂の投げ方は、右肩を痛めている投手の典型的なパターンです。今のところ、松坂が右肩を痛めているという情報はありません。ただ、松坂はこの『右肩を痛めている投手』の投げ方でずっとやっていくことになります」
見方を変えれば、今の松坂は右肩痛を再発させる危険性も秘めているというわけだ。
「松坂の中で、右肩痛は完全に消えていないのでは。痛みを抱えながらのピッチングをしているのかもしれません」(前出・同)
同様に、こんな声も聞かれた。松坂は「切り札」も見せてしまった、と。
「同僚のニールに教えてもらったという『落ちるボール』を披露してしまいました。松坂はフォークボールやシンカー系の落ちる変化球をあまり使わない投手でした。今季は落ちるボールも使ってくると教えてしまったようなもの。ペナントレース前なのに、手の内を明かしてしまいました」(球界関係者)
新しい変化球を公開してしまったことへの批判的な声…。しかし、松坂クラスのベテランになれば、「落ちるボールを投げるゾ」と相手バッターに思わせ、それを駆け引きの道具に使ってくるかもしれない。
「松坂は経験豊富なのでどんなピンチにも動じません。肩痛再発がなければですが、中継ぎで来たら、大きな戦力になるのでは」(前出・プロ野球解説者)
テクニックで相手打者を翻弄させる投球術。長いイニングが投げられないのであれば、“1イニング零封”のセットアッパーは適任かもしれない。
「松坂は先発投手の自負、美学が強い」(球界関係者)
先発への強いこだわりを捨て、チームに貢献することを最優先に考えた時、平成の怪物は猛威を発揮するだろう。(スポーツライター・飯山満)