緊迫した局面の時期に触れるのも憚られるが、今年は東日本大震災(2011年)から9年。3月11日の同追悼式は中止となった。
「約1200年前に起きたマグニチュード8.3以上とされる貞観地震(869年)の震源地は東日本大震災と近かった。貞観地震から9年後には関東を襲ったM7.4の相模・武蔵地震が発生している。つまり、今年は首都直下地震がいつ急襲しても不思議ではないのです」(サイエンスライター)
もし、新型コロナが蔓延している現在、大地震が発生したらどこへ避難したらいいのか。避難場所となる学校は一斉休校となっているうえ、例え、体育館が開放されても集団感染の恐れは常につきまとう。
防災ジャーナリストの渡辺実氏が語る。
「実は最近、内閣府から通達が届きました。それによると、よりベターな対策となっています。要約すると、在宅避難をベースに考えろということです。どういうことかというと、家を失い、避難所に住まざるを得ないような人を体育館に押し込めるのは公衆衛生上できないので、学校の教室を使うしかない。今、首都圏の学校の教室にどれほどの被災者を収容できるか、確認しているところみたいです」
幸いにして自宅が被災を免れた人は在宅避難を、自宅を失った人は学校の教室避難を前提に考えるということなのである。
「それでも溢れるようなら、それぞれの地域にあるマンションの共用部分を使えるよう、地域住民同士で話し合ってほしいというものでした。とにかく、雨風を凌ぐためにはそれしかありませんからね。しかし、マンションに関係のない赤の他人を共用部分に住まわせるなんて気味が悪い人だっている。マンションの共用部分にすら入れなかった人は、体育館に間隔をあけて収容するそうです」
新型コロナウイルスのワクチンはまだ開発されていない。アルコール消毒は有効だが、手洗い、マスク着用、うがいに明確な予防効果があるのかは分かっていない。では、どう対処すればいいのか。
山梨大学医学部名誉教授の田村康二氏が言う。
「我々はクルーズ船の深刻な状況を目の当たりにし、狭い空間にいると、いかに感染しやすいかが分かったと思います。大地震に加えて新型コロナ肺炎…降りかかるこうしたクライシスを乗り切るには、リスク分散するしかないと思いますよ。2メートル以内での会話を避け、やはり、マスクを着用して手洗い、うがい、アルコール消毒を心掛ける。それを怠らないことが大切だと思います」
身近にできることを行っても、新型コロナ肺炎はパンデミックになる勢いだ。よく“歴史は繰り返す”というが、明治維新の迫った1850年頃、アメリカ風邪なるインフルエンザが流行して大勢の庶民が犠牲となった。そして、4年後にはM8.4の安政南海地震が発生、再びアメリカ風邪が流行しているのである。
★巨大地震誘発する深発地震
武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が指摘する。
「最近、フィリピン海プレートが活性化し、首都圏でも頻繁に地震が発生しています。加えて、駿河湾でしか獲れない桜えびが大不漁です。フィリピン海プレートの活性化で、駿河トラフ付近に何らかの異常が発生したのではないか」
2015年5月30日、小笠原諸島西方沖を震源とするM8.5の地震が発生した。震源に近い東京都小笠原村の母島や遠く離れた神奈川県二宮町では震度5強を観測した。
「北海道から沖縄まで、日本全国で震度1以上の揺れを記録する地震だった。特筆すべきは、震源の深さが約590㎞と非常に深かったことです」(前出・サイエンスライター)
実を言えば、この深発地震をめぐっては衝撃的な学説がある。
「浅いところで起きた海溝型の大地震が、同じプレートの深いところにも影響を与えて、深発地震を引き起こしたのではないかという学説です。東日本大震災(震源の深さ24㎞)と小笠原諸島西方沖の震源は1000㎞あまり離れているが、直径1万㎞ある巨大な太平洋プレートにとっては、そう遠い距離ではない。その意味では地震エネルギーが溜まっていて深発地震に影響してしまったというのです」(前出・島村氏)
さらに、深発地震について恐ろしい説がある。大きな深発地震が起きる前後、同じプレートの浅いところでも大地震が発生するというものだ。
2003年9月に北海道十勝沖で起きたM8.0の大地震の2カ月前には、同じプレートで深さ500㎞近いところでM7.1の地震が起きているのだ。13年前には深さ約600㎞でM7.2の地震。また、1952年の北海道十勝沖で起きたM8.2の大地震の2年前には、同じプレートの深さ300㎞あまりのところでM7.5の地震が発生している。
「大きな深発地震が起きると、それによってプレートの留め金が外れて、数年後、あるいは数十年後に浅い海溝型の巨大地震が誘発されるというのです」(島村氏)
Xデーが近づきつつある南海トラフと首都直下。浅い海溝型と深発の関連性を考えれば、待ったなしだ。