杉村は、8日に放送された『サンデー・ジャポン』(TBS系)の中で、一斉休校となった小学生を含む自身の子ども3人について様子を問われた際、「そう簡単な話じゃないんですよ。ずっと1か月も家にいるのは」と答えた上で、「若者を家に閉じ込めるんじゃなくて、感染リスクの高いお年寄りを家に閉じ込めた方が、感覚的には合うんじゃないかと」と発言。
これについてネットでは、「確かに」「言い方に問題があるだけで、年寄りは死亡率が高いから間違った意見ではない」といった賛成意見の他、「年寄りが家でじっとしてると、ボケたり足腰が弱りやすいからそれはそれで心配」といった現実的な意見もあった。
厚生労働省が9日までに発表している新型コロナウィルス感染による死亡例の報告では、国内での死亡者数全9名(クルーズ船を含まない)のうち、非公開となっている1名を除いた残り8名は、全員70歳以上であることがわかっている。これだけを見ても、高齢者の感染リスクが高いことは明らかだ。
ところが街中では、普段通りに外出する活動的な高齢者の姿が多く目撃されている。
例えばネットでは、「母が相変わらずパチンコ仲間とパチンコ店で遊んでいる」「高齢者グループで旅行の計画を立てていると話していた」「街中の飲食店で集まってるのをよく見かける」などの報告があった。
こうした一部の無防備な高齢者の中で、新型コロナウィルスについての情報を知っているにも関わらず、外出を自粛しない人の心理的特徴には、「正常性バイアスの働きの強さ」が窺える。
「正常性バイアス」とは、人が異常事態に直面した時に、「大したことではない」または「自分は助かる気がする」というように、自分の都合の悪い情報や状況を無視したり、過小評価したりする偏見、心の働きをいう。正常性バイアスは、老若男女問わず誰にも備わっている心理的機能で、人によって、あるいはその状況によって働きの強さに違いが出る。
正常性バイアスの働きがあることによって、パニック状態に陥らずに済んだり、過剰な精神的なストレスを受けないといったメリットはあるものの、危機的状況から逃げ遅れたり、今回の場合では、ウィルス感染のリスクが高いというデメリットを孕んでいる。
また、一部の無防備な高齢者のもう1つの特徴として、「経験則に偏った判断」がある。
人の知能に関する理論には、「流動性知能(新しい場面に適応する能力・推論力・思考力・記憶力・計算力・集中力などの能力)」と「結晶性知能(日常で習慣化したもの・専門的知識・趣味など過去の経験によって培われた能力)」とに分けて考えるものがあり、人は加齢と共にこの流動性知能が低下し、結晶性知能が向上する傾向にあることがわかっている。尚、訓練次第では流動性知能を維持することも可能である。
高齢者が結晶性知能に偏った判断をする場合、例えば、新世代の新しい文化を取り入れようとしなかったり、買い物をする際に新製品を選ぼうとしないといった形で現れる。
新型コロナウィルスの場合では、例えば、「これまでウィルスに負けることなく生きてきたのだから、新型コロナウィルスも大丈夫」という見方をする人も出てくる。あるいは、流動性知能の低下によって、そもそも新型コロナウィルスという未知のウィルスの情報に対する関心度が低く、十分な理解がないまま無防備な行動に出てしまう要因になる。
とは言え、高齢者だけがリスクを拡大させているわけではない。自分の年代は死亡リスクが低いからといって、危機感なく活動する若者もリスクを拡大させる要因の1つだ。厚生労働省の公式HPでは、「全国の若者の皆さんへのお願い」として、特に10代から30代に向けた注意喚起のメッセージが提示されている。どの年代であっても正しい情報を手に入れ、自分の感染リスクだけでなく他人の感染リスクへの影響も考えて、適切な判断をする必要がある。
文:心理カウンセラー 吉田明日香
【参考サイト】
厚生労働省報道発表一覧(新型コロナウィルス)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html
厚生労働省「新型コロナウィルス感染症対策専門家会議」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00011.html