手塚治虫の実の息子でもある手塚眞は「手塚先生が死んで31年、新作が読めないですよねといろいろな方に言われる中、AIを使って手塚先生の新作を書かないかと誘われて始まったプロジェクトです」と「TEZUKA2020」に至る経緯などを説明。AI技術だけでなく、今回は人の手も入って苦心しながらも完成させた新作『ぱいどん』について、「まさに手塚治虫の世界の中にいるよう」と大絶賛する。
「手塚治虫を蘇らせるということでやりましたけど、AIを使ったこの手法は若い漫画家の育成に、将来、役立っていくと思います。10年も経てば当たり前の技術になっているかもしれません」とも述べ、「AI時代になってもこういう形で漫画という文化が残っていきます。漫画を最初に広めた手塚のニュアンスが残っていくことは重要です」と今プロジェクトの意義を力説。今回は前後編で完結の内容となったが、「これが人気が出ればいずれは連載していきたいです」と『ぱいどん』の将来の展望も語った。
ちばも「主人公を見て、懐かしい感じがしました。『どろろ』、『ブラックジャック』、手塚さんのいろんな血が入っている感じがして懐かしい感じがしました。よくここまでやったなという作品になっています」と感慨深げ。矢部も「すごいなと思います。読んでワクワクしました。キャラクターも魅力的。仕事依頼を受けても簡単には受けないような主人公の姿勢は『ブラックジャック』的でもあったし、『三つ目がとおる』を彷彿とさせるようなギミックもあったりして、すべてにおいてワクワクするような読書体験ができました」とにっこり。
矢部が最後に手塚眞に「続編を読みたいです」とリクエストする一幕もあったが、これに手塚眞も好意的。「その続編描きませんか?」と矢部に返すと、矢部は驚きの表情。「僕がやると壊滅的にタッチが変わると思いますよ」と笑顔を見せていた。
(取材・文:名鹿祥史)