昨年5月3日、上原氏はロッテとの二軍戦に登板。このことを練習前に上原氏から直接聞いたという福浦コーチは、二軍首脳陣に対し「上原が投げるので、代打で良いので(打席に)立たせてください」と自ら出場を志願し、8回一死の場面で同級生対決が実現した。
注目の対決は、福浦コーチを右飛に打ち取った上原氏に軍配。すると、上原氏は目線を合わせずに、自らの右手をベンチへ下がる福浦コーチの元へ。福浦コーチも自らの右手を差し出してこれに応じ、両者は無言でタッチを交わした。
この一幕について、上原氏は「狙ったわけじゃない」とした上で、「福浦が出てくるということ自体も分かってなかった。試合前に投げるということは伝えて、『対戦できたらいいな』という話だけしていた」と対戦が実現するとは思っていなかったことを告白。
続けて、「同級生で対戦できるっていうのが(すごいこと)。(同級生の)現役選手がもうほとんどいなかったので、自分の中で(対戦できたことへの)満足感はありました」と福浦コーチとの対戦を感慨深げに振り返った。
一方、番組にVTR出演した福浦コーチも、上原氏との対戦について「ジーンとくるものがあった」と一言。「本当に最後に対戦してよかった。同級生でここまで一緒に野球ができた、この年齢までできたのはすごいと思う」と回顧していた。
今回の放送を受け、ネット上には「お互いノールックでのタッチはかっこよすぎ」、「映画のラストシーンみたいで泣ける」「世代の生き残り同士にしか分からない感情があるんだろうか」、「福浦さんと対戦出来たから、引退へ踏ん切りがついたのかな」という声も挙がっていた。
「今回番組で取り上げられた上原氏と福浦コーチのタッチシーンは、当時二軍戦を観戦していたファンの間でも『なんで上原は福浦に手を差し出したんだろう』、『もしかしてお互いに引退の挨拶を…?』と話題を呼んだ場面です。上原氏は引退会見でも福浦コーチとの対戦に触れ『うれしかったし、これでいいのかなという気持ちになった』と口にしていましたね。上原氏は巨人からメジャーに挑戦しその後巨人に復帰、福浦コーチはロッテ一筋とお互いに歩んだ道のりは異なりますが、同じ1975年世代としてここまでプレーを続けてきた戦友。もしかしたら上原氏の中には、『最後は福浦と対戦して現役を終えたい』という気持ちがあったのかもしれません」(野球ライター)
上原氏が語った“戦友”福浦氏とのエピソードに、改めて感動したプロ野球ファンは多かったようだ。
文 / 柴田雅人