「小泉さんがこのまま麻生総理誕生を黙ってやり過ごすはずがない。福田改造内閣で派閥の領袖のほとんどが閣内に取り込まれ、小泉改革路線はなきものにされようとしている。それでも小泉さんは、安倍前首相の辞任時に福田氏後継を是認した以上、信じて黙ってるほかなかった。しかし、いまの麻生氏はあからさまに景気刺激策を最優先する考えを明言しているし、総理のイスに座るためならば悪魔とだって手を結ぶ。小泉チルドレンを中心に、いまだに党内には小泉再登板を望む声が大きい。必ず動く」と永田町関係者。“小泉の乱”が起こる可能性を示唆した。
2日午後の自民党総裁選挙管理委員会で、総裁選は10日告示、22日投開票に決定。どんな対抗馬を立てても、年内にも行われる衆院解散・総選挙に向け、国民的人気の高い麻生氏優位は変わりそうもない。しかし、“トリックモンスター”小泉元首相が動けば空気は変わる。「構造改革なくして景気回復なし!」と訴えた小泉元首相が、改革路線から脱線ぎみの現状にちょっと待った!をかけてもおかしくないというのである。
与党担当の政治記者は「確かに小泉元首相の動きは要マークだけど、本人が再登板する気まであるかどうか」とやや懐疑的ながら、次のように指摘する。
「まさか、このタイミングで福田首相が辞任するとは思っていなかった自民党は、大慌てで“小技”ばかり仕掛けている。当初は小沢一郎代表の無投票3選が決まる民主党代表選より1日早い20日投開票で調整していたが、小沢氏が3選決定でヘタなパフォーマンスを打てぬよう後ろにずらした。無投票では民主党との違いを出せないので、麻生氏に負け戦覚悟のアテ馬探しに懸命。見えすいた選挙戦では盛り上がらないのは分かっているから、効果的なサプライズが欲しいところではある」
福田首相がどう言い訳しようと、1年と持たずに安倍前首相と2代続けて政権を放り出したのは事実。国民の政治不信はぬぐいようがない。連立政権を組む公明党からは早期の衆院解散・総選挙を求められている。そんな苦境がよーくわかっているからこそ、総裁選では複数候補者による白熱した討論を展開し、本命・麻生氏の魅力を最大限引き出したうえで総選挙に臨む作戦という。
要するに、お祭り騒ぎの勢いでごまかそうというだけのこと。
一方、麻生氏に押し出されるかたちで退いた中川秀直元幹事長の動向にも注目が集まっているという。
「中川氏は小泉元首相の構造改革路線の継続を掲げ、『反麻生』の立場を鮮明にしている。小泉氏に近い小池氏を擁立し、来たる総選挙で選挙区のくら替えなど危うい立場に置かれている当選1回の小泉チルドレンを派閥横断的に結集したいところ。これに小泉元首相がどう絡むかだろう。最近はボーリングにはまっているらしく、小泉チルドレンは小泉氏にすがるようにボーリング場ですり寄っているようだ」(前出の政治記者)
そもそも「政局の小泉」と呼ばれたほどの乱世好き。国民的人気はいまだに高いが、はたして、改革断行のため変人の再登板はあるか?
○“麻生包囲網”恐れ慎重な態度
麻生氏陣営は改造内閣の幹事長就任をめぐって「総選挙の総裁禅譲説」が流れたため、党内の反発を招かぬよう慎重な姿勢をとっている。正式な出馬表明は告示まで控え、幹事長職を全うすることを優先する方針だ。
麻生氏は幹事長に就任した直後から、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2012年度に黒字化させる政府方針の先送りに言及。小泉氏の国債発行30兆円枠にもこだわらず、「財政出動派」の立場をとっている。
昨年の安倍前首相退陣を受けた総裁選では「麻生クーデター説」が流れて一気に“麻生包囲網”が敷かれ、福田首相に大逆転負けを喫した苦い経験がある。