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実話怪談記者の除霊体験記(2)

 除霊当日、私は早朝に現地に赴いた。
 8月といえば、進学塾では夏期講習の真っ最中である。そのために、生徒が来る前の早い時間に除霊を済ませてしまおうということだった。
 私は約束の時間よりも少し早く現地に着いたため、雑居ビルの入口まで行ってみると、すでに中に入ることができた。
 人気のない早朝の雑居ビル。
 幽霊が出ると訊いていれば、不気味さを感じてしまう。
 しかし、私は好奇心もあり、進学塾のあるフロアにエレベーターで行ってみた。
 外光がどこからか漏れてきており、暗さはそれほどではないが、その雰囲気は異様であった。
 私には霊感というものがあまりなく、霊の存在を感じるなどということも、今までにほとんど体験したことがない。

 しかし、その場所は違った。
 まだ施錠されたままになっている進学塾のガラス扉の中から、異様な気配を確かに感じた。
 霊感のない私が感じたものなので当てにはならないが、それはひとりやふたりのものではなく、大勢の視線を一身に浴びたような感じであった。
 一刻も早くこの場所から逃れたいと思い、今乗ってきたエレベーターのボタンを急いで押す。
 早朝からエレベーターを使うものはそうそうおらず、エレベーターはそのままこの階にあるはずである。
 それなのになかなか扉は開かなかった。
 何度かボタンを押して、ようやくのろのろと開いたエレベーターに急いで乗り込み、私は雑居ビルを出て近くのコンビニで待機した。

 やがて、合流した進学塾のスタッフと住職と共に再び雑居ビルに入ると、先ほど感じた強烈な気配はすでに霧散していた。
 先ほど感じたものはなんだったのだろう。
 ひとりきりという状況が、私の恐怖心を煽ったのだろうか。
 それを確かめる術は、私にはない。
 しかし、これから始まる除霊で、何かが分かるかもしれない。
 私がそんな期待を密かに懐く中、除霊の準備が静かに整えられていった。

(「実話怪談記者」へみ 山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/

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