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私はこうしてお客様に落とされた 〜マリア・ニューハーフパブ(27歳)〜

 とある繁華街にある、ニューハーフパブ。13人の女の子(オカマ)が所属するこの店ですが、巷ではなかなか有名なお店なのです。

 「マリアさん、なんか胸大きくなってない!?」
 「ちょっと〜! なってないわよ、失礼ね。2年前の手術ですべて終わってるんだから!(笑)」
 「あら、ごめんなさい! てっきり、彼氏のおかげで大きくなったのかと思っちゃった〜」

 閉店後の更衣室で騒いでいると、他の女の子(オカマ)も、にやけながら集まってくるよね〜。

 「えっ、マリアさんって彼氏できたんですか?」
 「もしかして、田村さんですか?」
 「ピンポーン! 私、田村さんと付き合っちゃったの〜!」

 ガールズトークが盛り上がるたびに、更衣室内が黄色い悲鳴と男の汗臭い匂いで充満してきちゃう。でも、それが閉店後の楽しみだからいいんだけどね。

 「田村さんがマリアさんを狙ってたのは、なんとなくわかってましたけど…。何で付き合うことになったんですか?」
 「やだ〜! それ私も聞きたい! マリアさんが男を落としたテクニック〜!」
 「しょうがないわね…特別に教えちゃうわ! 田村さんって、別にゲイやバイじゃなかったの。いたって、ノーマル」

 真剣に耳を傾ける女の子たちに向かって、私は話し続けたわ。

 「でもね、付き合いでこの店に来て、私と出会ったでしょ? 最初はお互い恋愛感情なんてまったくなかったんだけど、いつかのアフターで私がベロベロに酔っちゃったのよ。そのときに私ったら、号泣しながら叫んでたみたいなの。ずっと、女になるために努力をしてきたのに、どうして、大好きな人の子どもが産めないの? それがくやしい!ってね。」

 少なくとも、ここで私の話に耳を傾けている子たちは、この気持ちをわかってくれていずはずよ。ちょっと体が大きいことと、酒やけしたみたいな声をのぞけば、見た目は普通の女性と変わらないはずだもの。

 「でもね、子どもを産みたい気持ちはわかる。だからって、それだけで女になったわけじゃないだろ? 好きな男と一緒になれれば、充分幸せじゃないか。って、田村さんは言ってくれたの。…それで、付き合うことになったのよ〜」

 しんみりしていた更衣室が、また、黄色い悲鳴でにぎやかになった。
 あのね、ニューハーフって、男の気持ちも女の気持ちもわかるから、普通の女より不器用になっちゃってるのよ? だからこそ、繊細に扱ってもらえたときのトキメキは、普通の女以上に高まってくるんだからね。

取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。その後、これまでの経験を活かすため、フリーランスへ転身。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
http://ameblo.jp/lisa-ism9281/
https://twitter.com/#!/LISA_92819

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