巨人、東北楽天の両球団がトレード成立を発表したのは、7月7日だった。巨人は和田恋外野手を、楽天は古川侑利投手を放出した。
「どうも、楽天から仕掛けてきたトレードのようですね。原辰徳監督(60)が一度、和田を呼んで話をしているんです。最終的に巨人で埋もれてしまうのなら、楽天に行ったほうが試合に出る機会も増えるということになって…」(球界関係者)
巨人ファンの間では、和田は期待の若手だった。昨季、ファームで本塁打、打点の二冠王に輝いている。登録は外野手だが、スタートは内野手。守備位置で4番・岡本和真とかぶるため、チャンスに恵まれなかった。
今年はシーズン途中のトレードが多い。巨人−日本ハム間で複数トレードが6月26日に発表され、その後も中日−オリックス間、また楽天は広島とも交換トレードを成立させている。トレードができるのは、7月末まで。通常、シーズン途中のトレードとは、主力選手の故障などを補う緊急措置である。その点から見れば、日本ハムは巨人から呼び戻した吉川光夫を先発テストし、捕手・宇佐見も試合で使っている。
だが、他のトレードはそうとは言い切れない。伸び悩んでいる若手、守備位置の重複などで埋もれかけている選手を交換し、2、3年先の将来に備えた、と。
「2、3年先を見越してのトレードは、通常、シーズンオフにやるものです」(前出・同)
ある球団スタッフによれば、球界は近年、シーズン途中でのトレードを避けてきたという。それは選手の生活のことを思ってのことで、家族がいればなおさらだ。今年には入って考え方を変えた理由だが、労組・プロ野球選手会と経営陣の駆け引きと見る向きもある。
「選手会は、各選手の出場機会を増やすためにトレードの活性化と、出場機会に恵まれない選手を対象とした現役選手ドラフトの新設も提案しています。経営陣は現役選手のドラフト新設には否定的です。だったら、『選手が出場機会を求めているようだし、シーズン中でもトレードをやっていこう』と考え方を変えたようです」(ベテラン記者)
しかし、こんな見方もできる。今回の4件の途中トレードだが、うち2件は楽天絡みである。新ゼネラルマネージャー・石井一久氏(45)が、経営陣と選手会の駆け引きを知り、「トレードが仕掛けやすい」と判断し、戦力の再整備に乗り出したのではないだろうか。前述の巨人との間にまとめたトレードは、楽天側から仕掛けたようだし…。
来たる7月12日、選手会は総会を開催する。オールスター休みの総会は恒例行事だが、その約2週間前、選手会は日本野球機構(NPB)の選手関係委員会に連絡を入れ、「見解を示してほしい」とお願いしてきたそうだ。何に対する見解かといえば、出場機会に恵まれない「現役選手のドラフト」の提案に関する経営陣の考え方である。総会ではそれをもとに対応策を話し合うつもりなのだろう。
今回の経営陣と選手会のやり取りに詳しい要人が、こう言う。
「NPBというか、12球団の代表者が集まって、現役選手のドラフトに関する意見調整みたいなことをやっています。選手会に対し、代案は出します」
現役選手のドラフトは認めるが、その対象となる選手の出場数などで選手会と異なる基準を出すのか。それとも、フリーエージェント権の取得に関する現行ルールの変更か。今夏の選手会総会はキナ臭いものになりそうだ。(スポーツライター・飯山満)