今年の皐月賞は、記録面において、ダービーにつながるさまざまな記録を内包している。そのラップをひも解くと、前半1000メートル通過は59秒1。ここまでは、通常より少し速めだったように思うが、何と7F目からは11秒9→11秒8→11秒7と、3連続で11秒台のラップが並び、ラスト1Fは12秒1(3Fは35秒6)。こんなタフな流れの皐月賞は、お目にかかったことがない。
引っ掛かり癖のあるアンライバルドにとっては、このハイピッチは、まさに絶好の流れ。当面のライバルであるリーチザクラウンやロジユニヴァースを内外に見ながら、仕掛けのタイミングを計る恩恵を受けたとはいえ、直線入り口では津波が押し寄せるかのように、一気に他馬を飲み込み、皐月賞史上歴代2位の芝2000メートル1分58秒7という好記録で完勝した。
ちなみに、アンライバルド自身の上がり3Fは、レースのそれを1秒上回る34秒6。勝負を決めた残り2F目のレースラップ・11秒8から逆算すると、推定10秒9前後の脚を駆使。あのハイペースの上に立っての10秒台の加速力はズバ抜けている(距離延長もOK)。しかも、1分58秒7はレースレコードに0秒2差。ノーリーズンが保持するレコードは、中山の馬場改修後、初めての皐月賞で、好タイムが続出した年でもあったし、実質的には、今年の皐月賞こそがレコードといっていい。
なんて、個人的には、馬体のラインやつくりは、マイラー寄りとは思うが、普通、この走破タイムと上がりで勝てば、まずダービーでも崩れない。何か他馬の大駆けにあったとしても、少なくとも2着は確保できるはずだ。
人気では、同馬より上の支持を集めていたロジユニヴァースとリーチザクラウンは、あの激流にモロに巻き込まれ、14・13着に大敗。ただ、リーチザクラウンは、怒とうの返し馬と馬体の迫力を見て、アンライバルドが負けるとしたら、この馬だろうと即座に断言したくらい。記録面においても、2戦目の未勝利戦は、何と後続を12馬身もちぎる大差の楽勝。机上の計算だが、芝1800メートル1分47秒4の先の1Fを12秒0で走ったとすると、2000メートルは1分59秒4。2歳暮れに、2分を切ろうかというケタ違いのポテンシャルを見せつけている。果たして今回は大胆な追い込み策か、それとも…。いずれにしても、スローペース必至のダービーとなると怖い。アンライバルドが逆転を許すなら、スケールの大きなリーチだろう。
もちろん、ロジユニヴァースも、札幌2歳Sでジャングルポケットが保持していたレコードを、0秒5も塗りかえる芝1800メートル1分49秒1をマーク。続くラジオNIKKEI杯は、歴代3位の好タイムでリーチザクラウンを4馬身差と完封しているだけに、皐月賞を惨敗したからといって、まったく無印とはいかない。惑星程度の印は、考えておいたほうがいい。
皐月賞は、直線勝負に徹する、無欲の作戦が功を奏したこともあるが、アンライバルドを上回る上がりをマークしたトライアンフマーチと、セイウンワンダーも連下には押さえておきたい。ただ、あくまで流れに恵まれての2・3着候補。アンライバルド逆転までは疑問だ。
一角崩しがあれば、アプレザンレーヴ。青葉賞からは、いまだダービーの勝ち馬は出ていないものの、芝2400メートル2分26秒2は上々。確実に上位争いには加わってくる。アイアンルックは、NHKマイルC組では、唯一中距離馬の馬体をしている。距離はもつ。前回は勝負どころで馬体をぶつけられる不利があっただけに、一発があっても不思議ではない。