今年はすでに昨年の18勝を超える21勝を挙げ、勝率と連対率はともに倍近い数字をマーク。ちなみに、この2つの数字は南関東でもトップ5に入る優秀なものだ。
「初年度は手探りでスタッフとの調和を図り、昨年は自分の色を徐々に浸透させてきた。それが今年になって実を結んだ結果だと思う」と話すように、昨年はJRAのレースにも積極的に参戦。「井の中の蛙(かわず)になりたくないし、外の世界を見ることで視野が広がる」と、時にはあえて昔からの“大井流”に逆らう姿勢も見せる。
通っていた乗馬クラブで行われていた競走馬の育成に興味を持ち、高校卒業後に渡英。1年間、障害・平地両方の競走馬育成を学ぶ。帰国後は大井の栗田裕厩舎で厩務員、調教師補佐を務め、2004年に調教師免許を取得した。「栗田先生にはホースマンとして大きな影響を受けた」と、今でも尊敬している。
「『この馬はこういう馬』と思うのは嫌。『こうなる馬』だと思ってその馬の個性を引き出すために、刺激を与えることが大事だと思う」ときには逆転の発想でレースを選択することも。「馬をつくる能力はないと思っているから、成長を見極めて生かすのが自分のスタンス」
人馬ともにひとつひとつハードルをクリアしていくためにはどうしたらいいか?競走成績、血統背景という机上の理論に加え、定石にとらわれない柔軟な思考が好結果を生み出している。
「どこに向かうかというより、ワクワクすることをやりたいね」しなやかな異端児が巻き起こす風をもっと感じたい。