これまで空き地だった建設予定地には工事車両が走り回り、大型クレーンが林立。この光景を眺めながらあいりん地区に向かう初老の男性が「ほんまにできるんやな…」とつぶやいた。
こう言いたくなるのも無理はない。星野リゾートといえば、全国に高級リゾートホテルを展開するホテルチェーン。それがリゾートのイメージとはほど遠い、新今宮に進出するからだ。2年前の計画発表後も、地元には「にわかには信じられない」というムードが漂い、予定地も空き地の状態が続いていた。それがいよいよスタートしたのである。
この動きに地元民は、期待と不安が入り交じる。“地域の活性化を考える”地元選出の元大阪市会議員がこう語る。
「天王寺はあべのハルカス、新世界は外国人観光客で、街の様相が変わるぐらいににぎわっている。そんな中で新今宮とこのあたりだけが取り残されていますからね。でも、星野リゾートのホテルが開業すれば、関空から電車で一直線の新今宮は、文字通り大阪市の南の玄関になるでしょう」
あいりん地区では、すでに簡易宿泊所はホテルに、立ち飲みはエスニック酒場へと変わりつつある。星野リゾートの進出は、この流れにますます拍車が掛かるとみられている。
一方、あいりん地区の住民からは「ワシらのことはほったらかしや」といった声も出ている。
「星野リゾートみたいな豪華ホテルができたら、ますますこのあたりの格差が広がるだけで終わるような気がします。関連工事でこちら(あいりん地区)にも仕事が回るという話がありますが、大きな期待はできません。それどころか、今のあいりん地区は万博まではまだ間があるわ、労働会館は建て替え中やわで、不安なことばっかりです」(地元ボランティア)
波紋は広がっているようだ。