これは、横浜ベイスターズのキャンプを視察した某大物巨人OBのセリフだ。そのOBはその発言の真意を説明もせず、一方的に立ち去ってしまったが、思い当たるフシはいくつかある。たとえば、巨人キャンプを偵察する他球団のスコアラーの人数だ。日を追うごとに少なくなっているのだ。
「14日の紅白戦は、けっこういたみたいだけど…」(メディア陣の1人)
巨人は“ニューフェイスなし”で本番に突入することになるかもしれない。
まず、紅白戦でドライチの存在感を示し始めた長野久義だが、「ヒット、本塁打を放ったのは全て外角球。苦手の内角球に手を出していないだけ」と、ネット裏の偵察部隊の評価は手厳しい。おそらく、ラミレス、亀井、昨季の新人王・松本が守る外野布陣に割り込めないと見下されているのだろう。
内野陣にしても、そうだ。原辰徳監督の期待も大きい大田泰示はスローイングに難がある。二塁にコンバートされた3年目の中井大介も、動きがぎこちない。この2人に成長が見られなければ、内野陣の入れ換えは考えにくい。
「強いて言えば、投手陣に少し変動がありそう。6年目の木村正太、移籍の藤井秀悟、小林雅英、あと未知数だが、前中日の中里篤史の動きがいい」(他球団スコアラー)
藤井、小林の仕上がり具合を確かめれば、「あとは去年のデータで間に合う」というわけか…。
戦力的に見れば、今季も巨人が圧倒的に有利だ。しかし、3連覇の貫祿なのか、他球団のキャンプと見比べると、全体的に調整が遅れている感も否めない。他球団のスコアラーがノーマークに近いのはこうした理由からだろう。
キャンプ初日、原監督が『イの一番』に声を掛けた選手は長野だった。その光景はライバルとなる亀井、松本も目の当たりにしている。亀井、松本にすれば、“無言の檄”にもなったはずだが、彼らが目の色を変えて猛練習をしているという話は聞こえて来ない。
「失礼な話にもなるが、キャンプはOBが存在感を誇示する場でもあるんですよ。若手、中堅を技術指導し、球団、首脳陣に恩を売るというか。まあ、そういう腹黒い魂胆を持たないで純粋に指導するOBもいますが」(前出・メディア陣の1人)
巨人OBがライバルとなる横浜のキャンプに向かったのは、教えたくなるような伸び盛りの若手がいないからか? 今季の原巨人は『独走』とは行かないようである。(スポーツライター・飯山満)